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2014年5月19日 (月)

歌集『リアス/椿』梶原さい子 砂子屋書房

2009年から2013年までの432首をおさめている。

Ⅰ章は「以前」
Ⅱ章は「以後」のタイトル。
これは、2011年3月11日の東日本大震災の「以前」と「以後」である。


   *鍋摑みのやうな袋を嵌められておとなしうなる祖母の両つ手
   *皆誰かを波に獲られてそれでもなほ離れられない 光れる海石(いくり)
   *何見でも涙出るのと言ひながら母はまた泣くつるつると泣く
   *受け取ることの上手ではなき人々があらゆるものをいただく苦しみ
   *女なり男なりを超えたるかたち網に掛かりて帰りたまひき
   *缶切りもなし栓抜きもなきものはみな海底(うなぞこ)と思ひて暮らす
   *引つ張つて行かれぬやうに母と吾と父を挟みて眠らんとせり
   *死にたるとまだ生きたるがきらきらとゐるばかりなり青野沢川



いずれの歌を読んでも、観念的でなく、作者の体験による裏打が感じられ
「震災詠」としても、優れていると思う。
3首目の「何見でも涙出るの」の方言に悲しみが、より伝わって来る。
7首目の父を間にして母と作者が寝る姿などは、父を護ろうとするせつない
家族のありようが迫ってくる。

1首目の「鍋摑みのやうな袋」の歌は、Ⅰ章の「以前」の歌だが、介護をした
者ならではのリアリティに恐れ入った。そんな姿をしっかり歌にしている作家魂と
でも言おうか。


三陸ならではの歌集題にも心惹かれた。
ともあれ、この一集は話題になるであろう。

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