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2014年6月27日 (金)

柘榴忌(3)

歌集『火焔樹』鶴 逸喜  葦書房 昭和52年12月25日発行

この歌集は鶴 逸喜(つる いつき)亡きあと、加藤滋、加藤悟、加野喜久親、
浜崎毅、恒成美代子によって編まれ、跋文を加藤滋が書いている。

生前、準備を進めていたにも関わらず、結局、この歌集を鶴さんは、目にすることが
出来なかった。ある時は自分自身のことを「無冠の帝王」などと、冗談っぽく言い、
笑わせていたりもしたが…。


歌集後半の、3「朱肉染む指」昭和40年~昭和52年 のなかから15首だけ紹介したい。


  *三十七年ただただ暗く生きて来ぬしあわせといえば妻を得しのみ
 
  *蝶よお前の飛翔をぼくに呉れないか何より遁れたいというのでもないが

  *少しずつ殖えゆく預金通帳を妻はよろこびわれははかなむ

  *秋蝶をふたたび見失いてより不憫の妻へ心をもどす

  *確信をもちて言い得るただ一ついかなる戦いもわれは拒否する

  *人の死もわが生業の支えにて刷りし訃報を届けに行くも


  *くれないの舌ひたひたと水なむる夜中の猫もわが小家族


  *病みて得しものに妻あり小さき店守(も)りつつ共に片肺持たぬ

  *花柘榴(ざくろ)咲きのこりつつ目ばかりが大きくなりてわがおんな痩す

  *人間の顔もつ故に人間であらねばならぬ夜の橋渡る

  *尻冷ゆるまでを厠にかがみいてさもしく金のこと想いいつ

  *考えた末にやっぱり墓だけは故郷(くに)に残しておくことにする

  *脱糞を終えし仔猫のおのずから足らえる貌は塀に添いゆく


  *戦争(いくさ)より持ちかえりたる一ついのち生くる限りは病まねばならぬ

  *技術もつ者は羨(とも)しなど何を言う病みてぎりぎりに得し職なるに
 

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