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2014年6月 1日 (日)

歌集『風の回廊』大建雄志郎  ながらみ書房

退職後の66歳から74歳までの作品438首を収録。

「りとむ」所属の第一歌集である。
あとがきに「ーー略 いつも私という影がつきまとい、なかなか離れようとしません。その意味でも自分史のような歌集です。略ーー」と、述べており、短歌における私性の問題にも 触れている。 いずれにしても、短歌の場合「私性」を排除することはなかなか難しい。 また、たとえ消したとしても、作品の背後には作者の像が多かれ少なかれ 顕われるものだ。むしろ、全く作者自身と関わりのない歌の方が読み手(わたしには)としては、 興が醒めるのだが…  
   

  *職退きて精神(こころ)は楽になりました いのちの維持費が少しかかります
    
  *十二月八日レノン忌と子が言へばさういふ時代と黙し諾ふ
    
  *あのあたり風の回廊あるならむ梢鳴らして風吹き渡る
    
  *おだまりと老妻叫ぶときありてこの強さゆゑ吾(あ)も生き延びき
    
  *太陽系第三惑星北半球日本府横濱吾之宇宙戸籍
    
  *絶望は黒希望は白と君言ふが灰色だけの僕はなにもの
    
  *冷房も扇風機もなきあの頃よそれでもみんな精悍に生きた
    
  *墓守りを頼むと言へば妻その気 男は先に死ぬものと決めて
    
  *人去ればその影も去る 影消えぬ広島のあの石段以外は
    
  *アッサムはすぐ紅茶色ダージリンは時間がかかる 私のやうだ



4首目・8首目の「妻」をうたった歌には、笑ってしまう。こころあたりがあるんだよね、わたしにも。 こうして歌に出来るのも「妻」あってこそ。おおらかでよろし。
2首目・9首目には、思わず姿勢を正したくなってしまった。 12月8日と言ったって、戦後生まれには分らない。「レノン忌」の方が身近なんだ。
そして、「広島のあの石段」。影が消えないという現実。


「自分史のような歌集」と、謙遜しなくて大丈夫。
大建雄志郎という一人の人間の〈生〉が、〈思索〉が、〈思想〉が、溢れています。

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