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2014年8月10日 (日)

歌集『クラウド』 井辻 朱美   北冬舎

ファンタジーの世界では高名な著者だと知っていたものの、奥付に書かれている
略歴を読んでひるんでしまった。第43回サンケイ児童文学賞、第27回日本児童
文学学会賞、等。



それはさておき、このたびの第六歌集を読んで感じたことは、わたしの先入観より
わかりやすい歌が多かったことだ。付箋を付けていったら、あまりに多くて、前半の
一部のみの紹介にとどめる。




   たましいのかたち真綿に横たえてとろりと深き翠(みどり)のまがたま

   魂はいくらでも軽いほうがいい ペットボトルの陽をはじくくびれ

   貝の象(かたち)のマカロニのように澄みている大和の風のなかの記憶は

   しゅるしゅると海の響きが透けている刺身の烏賊の足のひとたば

   図書室のみどりの壁に耳を触れ旅行記かたえに眠る椰子たち

   きりきりと歯車じかけの陽が沈む橋上の車みな祝福されて

   飛行機雲 真一文字にのぼりゆき天の縫い目が見ゆる楽しさ

   パンプキンのあちこちともる十月をこの世に還るいとしき霊たち

   なにをしに戻ってきたのかおもいだせないが蒼いこの世にめくれるページ

   しゃぼん玉吹いているような背を見せて少女がちいさき携帯に語る


1首目は、博物館などで見かける古代のまがたま、「たましいのかたち」が、
      真綿にくるまれているとしたところが妙味。
2首目は、ペットボトルのくびれの部分に焦点が絞られている。
3首目は、「貝の象(かたち)のマカロニのように澄みている」記憶。読みように
      よっては、上の句の比喩が、「大和」に掛かるともとれるが…。
4首目は、烏賊の活き造りの足を「海の響きが透けている」と捉えている。
5首目の歌は、はじめ結句を「獅子たち」と勘違いして読んでいた。「獅子たち」では、
         当たり前過ぎるか。やはり、飛躍した「椰子たち」の方がいいのか。
         でも、「名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ」を連想して
         しまいそう。
6首目の歌、「歯車じかけの陽」が発見か。
7首目の歌も「天の縫い目」の発見がいい。
8首目の歌は、ハロウィン。日本ではお盆に茄子や胡瓜で細工して霊を迎えたり、
         送ったりするが…。玄関には提灯を下げて。
9首目、モノを探すときによくこんな状態になるが、この歌では、「蒼いこの世」に
     戻ってきたと、とれる。そこが、卑俗さをクリアしている。
10首目の歌は、単にケイタイで電話している構図なのだが、上の句の比喩が
          少女の愛らしさを演出している。


なんだか、独善的な鑑賞で申し訳ないが、「読まずギライ」を卒業できた。



そういえば、本日の朝日新聞の朝刊で、この著者の井辻朱美は「うたをよむ」という
一文を書いていた。タイトルは「怪獣という『亜神話』」だったが…

   


    


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