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2014年8月12日 (火)

『地平線』 白蓮  ことたま社

昭和31年(1956)6月25日に発行された柳原白蓮の最後の歌集。

新書版の大きさであり、175ページの2行書きの2首組である。萌黄色の表紙に
模様が入っている。歌集題と名前は白蓮の筆書。

筑豊での暮らしを詠んだ歌から、長男(香織)を失った悲しみを詠んだもの、
各地の旅先(北海道・山形・佐渡ヶ島・長良川・伊勢・高野山など)で詠んだ
歌の312首を収めている。


この歌集のなかほどに収められている、終戦4日前に戦死した長男を
うたった歌(60首)は、しみじみとして、せつない。


      「悲母」ーー香織・昭和二十年八月十一日戦死ーー

    日本の老いたる母の大方は涙もろくなりて年くれんとす

    海見れば海の悲しさ山みれば山の寂しさ身のおきどなき

    この道は吾子が最後となりし道夫と並びてゆくは悲しも

    英霊の生きてかへるがありといふ子の骨壺よ振れば音する


    秋の風遠くより吹くなつかしさ子の事いひて夫と茶をのむ


    人の世の人なるわれやかくりよのみ魂の汝とむかひあへるも


    朝も夜も昨日もけふもなくなりぬ世を去りし子と敗れし國と

    あの日いつか帰ると思ひ征きし子の座りなれたる窓辺に座る


    わが肩に子がおきし手の重さをばふと思ひいづる夏の日の雨

    焼跡に芽ぶく木のありかくのごと吾子の命のかへらぬものか


*なお、この書は、旧伊藤伝右衛門邸が一般公開された平成19年(2007)
  記念にと、白蓮の長女、宮崎蕗苳(みやざき・ふき)さんが、書庫に残って
  いたのを、飯塚商工会議所に初版本100冊の販売を委託したものである。
  その中の1冊を、北九州のS・Yさんが、求められた。
  わたしは、読んでみたくて、このたび彼女からお借りしている。
    

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