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2014年10月20日 (月)

歌集『虫たちの宴』 木島  泉  ながらみ書房

郡上大和にお住まいの御歳82歳になる第2歌集。「心の花」に所属。


ぱらぱらと捲った時、猫の歌に目が止まった。
その猫の歌がとてもいい。猫を知り尽くしたおひとの歌であり、木島さんは
この歌集から窺うと、嘘の付けない正直なかただろうなと推測。



    嫌な奴が嫌でないときくれた猫 三毛よおまえに罪はないのに

    私を好きというより私のあげる竹輪が好きな猫たち

    病む猫はひっそり抱かれさびさびと戸袋あたり鳴く虫のいる 
   
    猫の子を猫っ可愛いがりしておれば命とはこんなに暖かいもの

    泣き虫の子猫が師走に舞いこんで私の方が泣きたくなって

    梯子登りそこねた猫を笑ったら恥ずかしそうにどこかへ消えた



猫の歌を読んでいたら、忽ち、木島さんの歌の魅力に嵌まってしまった。
猫の歌だけでなく、いずれの歌も、飾らず、素の姿がうたわれている。
ああ、こんなふうに年齢を重ねてゆけたら……と、思うのだが。



    こっそりとあなたの夢に忍び入る手立てはないか魔法はないか

    泣かされてだから泣かせたそれっきり行ってしまった赤いとんぼう

    明日さえ解からぬといい歳をいいさあれまだまだ木など植える気

    何もかも管理されるのいやだから一日一回は叱られている

    悔いのない人生なんかあるものか余白のままの日記を閉じる

    こんなにも伽羅蕗を煮てどうするの自分に聞いて大鍋に煮る




作者は至って真面目に、在るが儘を詠んでいるのだと思うが、そこがまた木島さんの
魅力ともなっている。歌の魅力はご本人の〈生〉の在りようにも通じる。まだまだ
あげたい歌が……


    これ以上赤くなれない赤とんぼ秋の終りの夕やけこやけ

    転んだら背丈ほどある雪の中誰も助けに来てはくれない

    蜻蛉草の花終りたりしょっきりと立ったまんまで朽ちて行くのか

    誰一人悪くないのに日が暮れたお腹も空いた帰ろよ帰ろ

    あいたいです添え書きのある年賀状あいにくるなら私は逃げる

    わが子よりわれにやさしく物を言う男の子なりけりランチをおごる


「あとがき」の言葉もいい。真っ正直の儘、ほんとうのことが綴られている。
この『虫たちの宴』は、木島さんを愛する皆さんのお心によって成った1集とも
いえよう。



木島さん、「ランチ」くらいで止めておきなさいませ。
世の中には悪~~い輩(やから)も居ますゆえ。
    

     

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