« 「歌の遠近術」 佐藤通雅   短歌往来 2015年3月号 | トップページ | 雛の里 八女ぼんぼりまつり »

2015年2月28日 (土)

歌集『その言葉は減価償却されました』 山口文子 角川学芸出版

ショッキングピンク?の帯の付いた、歌集題の長い、大きな字の歌集。

著者は、山口文子(やまぐちあやこ)1985年生まれ。

14歳から28歳までの298首を収めている。

14歳からというのも結社「りとむ」に所属していて、「りとむ」には子どもの「小りとむ」欄が

あり、そこでの投稿から数えると作歌歴は20年近くになるそうだ。

歌集構成もなかなか工夫されている。ちなみに以下のような構成となっている。


        V  2012~2014
        O  1999~2001
        Ⅰ  2001~2004
        Ⅱ  2004~2008
        Ⅲ  2008~2010
        Ⅳ  2010~2012



        肩書きをもたずに春の嵐くるメリー・ポピンズの傘はまだない

        平成二十四年四月十九日没 定型となるのか父も

        深々と「いいじゃないか」と発すれば北の書斎にまだ父がいる

        祖母の死というより祖父があの広い家で独りを生きる悲しみ

        丸善のエゴン・シーレに捕まって紫色の靴下を買う

        食べたいものを食べて読みたい本を読み歩きたいだけ歩いて寝たい

        雪辱はどうして雪なの六限を終えて二十時ビニ傘をさす

        次々に建てては壊しこんなにも平たくなっていくか私は

        家々は土砂にそれから原っぱに私は私のままに時間は

        その言葉は減価償却されました新たに産んでみせてよ私を



1首目は巻頭の歌で、10首目は掉尾の歌である。
このことからも、著者の構成力の並々ならぬものを感じる。


8・9・10首には「私」が直接うたわれている。
「私」に拘り、「私」を思索し、私探しをしているようでもある。
若い作者らしい5首目・7首目が微笑ましくもある。


2首目・3首目の父の歌にも、著者の明晰な精神が投影されている。
それは、4首目の祖母の死に対しても同様で、逝く者よりも残された者を
思いやる心の幅がある。


「りとむ」で培われた作歌力、そして、著者のポジティブな生きかたが
歌に反映されているように思ったのだが…




それにしても、この歌集が1000円(本体)とは、KADOKAWAさんも、
動きだした(笑)みたいだ。
 

« 「歌の遠近術」 佐藤通雅   短歌往来 2015年3月号 | トップページ | 雛の里 八女ぼんぼりまつり »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2032066/59098349

この記事へのトラックバック一覧です: 歌集『その言葉は減価償却されました』 山口文子 角川学芸出版:

« 「歌の遠近術」 佐藤通雅   短歌往来 2015年3月号 | トップページ | 雛の里 八女ぼんぼりまつり »