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2015年6月25日 (木)

柘榴忌(鶴 逸喜 忌)

昭和52(1977)年6月26日、熊本のホテルで客死した、鶴 逸喜 の命日は明日。

享年49歳であった。彼のことを知る人は知っているが、もう、おそらく知る人も

少なくなってしまったことだろう。


昭和35年、「角川短歌賞」を受賞寸前で逸してしまった。

当時の選者、近藤芳美は「こういう形で伸びて来た歌人を認めてやっても

いいのじゃないか、賞をやってもいいと思うがなあ、ぼくは」と推した。





戦争と肺患で暗く塗りつぶされた 鶴 逸喜 の青春。

その中で短歌という表現形式に一切を託した。

しかし、中央に認められることもなく、出ることもなく、一生を不幸なかたちで

終わってしまった。





        ボタン一つ押せば滅ぶる世界とも籠り病む日のラジオは伝う

        血を吐きて今日は厠に一人死ぬわれはいかなる死に方をせむ

        盛りあがり峡の若葉は日日鮮(あた)らしなべてを耐えて生き来ぬ、戦後

        敗兵の日の記憶にて血を喀きし瞳(め)に涯もなき海原の紺

        熱募りくる午後にしてまどろめばまぼろしの中揺らぐ火焔樹

                   鶴 逸喜 歌集 『火焔樹』 昭和52年12月 葦書房





しかし、歌は遺った。

そうして、鶴 逸喜 の導きによって、わたしはいまも歌をつくっている。

たった6年ほどの期間であったが、生涯のなかで彼に出会えたことは何よりの

僥倖であったと思う。





       雨に濡れ朱(あけ)つやめける柘榴の花 在りし日のきみ愛したる花

       水無月の死は忘れられ柘榴忌の柘榴の花の雨に濡れゐる


                   『夢の器』 1992年6月 ながらみ書房  miyoko


        

        

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