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2015年7月13日 (月)

歌集『モーヴ色のあめふる』 佐藤弓生  書肆侃侃房

机の上に積んでいた歌集や本、そのなかのこの1冊の表紙がなんだか気に

なっていた。どこかで見たような、誰かの写真のような。

今朝、目が覚めてわかった、オーバーラップに。

あとがきに書かれていた「質感ある装丁を手がけてくださいました毛利一枝さん」と。

毛利さんの装丁は定評がある。毛利さんに装丁をお願いできるなんて、いいなぁ。

詩誌『耳空』に毛利さんは写真やコラージュを連載していた。

そのVo1  2 (2009年12月)の『耳空』の表紙には、佐藤さんの歌集の折り返しに

つかわれているモノがおさめられている。(たぶん?)


装丁のことから入ってしまったが、タイトルも歌も佐藤さんの好みというか、指向する

ものが窺える。


         心の真実にそむかず、ある境地に至ってしまったりせず、ときには

         クリシェの力も借り、人がすぐ死ぬこの世をうたいながら、ただよって

         ゆきたいと思います。



カッコいいなと思う。さらりとこういう文章を書けるひとが羨ましい。
さて、さて、歌を挙げよう。




         天は傘のやさしさにして傘の内いずこもモーヴ色のあめふる

         みずうみに心臓あらばあらわるるひとつ水紋巨きくあらん

         雲が……。ねえ縁側に来ておすわりよ、落ちてゆくのはいつでもできる

         人はすぐいなくなるから 話してよ 見たことのない海のはなしを

         渡ることなき橋の上くれないに暮れる空あり空がふるさと

         身ひとつをまこと袋と感じつつ月よ今夜はどこで寝ようか

         あめゆきをみたした椀のかがやきにいまおりてくる上弦の月

         詩を思うときのなずきはいいにおい くちなし色の月が上がった

         いつもより月が大きい 紙芝居みたいな生を生きおおせたい

         大夕焼これはこの世のことにしてたまゆら風に鳴る二日月





口語調・会話体が効果的な3首目、4首目。
7首目は宮沢賢治の本歌取り?
やはりわたしは10首目の「これはこの世のことにして」が好きだ。


歌集後半の「月百首」は、圧巻である。

          

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