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2015年8月 5日 (水)

歌集『アルゴン』 斎藤 寛  六花書林

「斎藤寛とはナニモノだと、この歌集を手にする人はみなおもふ。そして読み終はつた

後でもふたたび斯くおもふであらう。」 小池光の帯文の4行目までだが、「ナニモノ」

なのだとも思い、歌人には少ないタイプの人のようにも、思う。






        真夜中の防犯カメラの前に立ちお ーい雲よと手を振つてみる

        ぼそぼそとぼそぼそとぼそぼそぼそと穂村弘の語る正論

        指を切りたまねぎを切り指を切りさあ召し上がれぼくのサラダを

        「血も涙もありすぎつてのも困るのよ」沼津の姉の梅雨のぶつくさ

        茶も出さず金も返さず百五十円飲み込んだまま自販機の黙(もだ)

        生き急ぐ者は急げる夏の夜の各駅停車ドア開けて待つ

        褒め合ひて突つつき合ひて抱き合ひて楽しく煮くづれよさかなたち

        「批判には愛が要るのよ 非難には憎が要るのよ 今夜は寝るわ」

        短歌とふ情の世界と振る枕よりぽろぽろと蕎麦殻の落つ

        ことばしかないのだといふことばしかないのだといふことばしかない




ちなみに10首選んでみたのだが、恣意的になったかもしれない。


しかし、なんとも面白い。愉快である。
歌人は顰めっ面の人が多いというか、その方が歌人らしくもあるのだが、
こちらが茶化されているみたいな…




1首目、山村暮鳥の詩を借り、モノしている。
2首目、穂村弘の語り口を活写?している。
4首目、この沼津の姉が集中に何度か出てくるが、実在するのかどうか
     わからないが、いいコンビだと思う。「沼津の姉」という設定が
     心憎い。
7首目、結句で、どんでん返しみたいに「さかなたち」なので、笑わせる。
8首目、「今夜は寝るわ」と言ったのも「沼津の姉」のような気が…
10首目、たぶん、作者(斎藤寛)は、「情」の世界から離脱したいのではないかしら。



などと、勝手な憶測というか、鑑賞にもならないことを書き記したが、「あとがき」に
よれば、歌集題の『アルゴン』について以下のように記している。




       アルゴンはおよそ何の役にも立たない気体なのだという。その
       ありように大いに親近感を抱き、タイトルとした。





「短歌人」所属の、「現代を生きる中年男」(小池光の帯文)である。


       
 

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