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2015年9月 1日 (火)

歌集『ぽんの不思議の』 小島熱子  砂子屋書房

2011年春から2015年初夏までの約4年間の作品を収めている第 4 歌集。





            庭草の茂りのなかに擬宝珠のむらさきありぬ ぬれぎぬならむ

     ホンコンフラワー挿したるプランター並べ置き工事現場はいよいよ暑し

     時間の象(かたち)けふはなんだか楕円にて庭の水引草(みづひき)をりをり傾ぐ

     秋の日に輝る日本海が右側の窓に見えをり帰りの電車

     エンドロール椅子に沈みていつまでも見てをり昼のミニシアターに

     百日草は仏壇のはな七歳のひるねに覚めし目に見たる花

     ゆふかぜにむらさきしきぶのつぶつぶが古き仕舞屋(しもたや)の戸口に撓む

     曖昧なシャツが明晰なシャツとなるスチームアイロンかけてゆくとき
     

     ほほづきが朱を灯して売られをり西口広場の花舗のバケツに

     うつくしく秋刀魚一匹食べをへた夫の皿にゆふかげとどく





 1首目、結句の「ぬれぎぬならむ」の展開が面白い。4句目までと何か関係が
ありそうで、なさそうで。「擬宝珠」の「擬」から連想したともいえるけど、
そうとらない方がいいかも知れない。結句の飛躍をたのしむ。


2首目のプランターの造花は暑苦しさをわざわざ演出しているみたいでもある。
造花なんて飾らない方がいいのに。まさに「いよいよ暑し」だ。

4首目の「右側の窓に見えをり」の設定が効果的、事実をそのま詠んだのだと思うが
その事実にリアリティを感じる。「右側」と「帰りの電車」でおのずと、作者の
帰ろうとしている場所が想像できるような。

5首目の歌は、わたしなども映画の長いエンドロールには席を立つこともできず、
「監督」の名前が出るまで見続けることになるので、共感して納得する。




6首目の「仏壇のはな」には言い得て妙だと感服。百日草は「昭和の花」って思ったり
する。田舎に行くとこの花がどこのおうちの庭にも咲いている。




7首目は「仕舞屋(しもたや)」が効果的な1首。

8首目の発見というか、見つけ所が流石。「明晰なシャツ」とは、考えたなぁと思う。




最後の歌は、常々思うのだが、食べたあとの皿がきれいな人は見ていて気持ちがいい、
逆に、食べ散らかしている人はなんとなく好きになれない。

「うつくしく秋刀魚一匹食べをへた」作者の夫。いいなぁ。





ここまでで、まだ、歌集の半分の105ページ。
最後の歌が223ページだから、それだけチェックした歌が多かったということかしら。
あとは読者にお任せ(笑)。




あ、そうそう「相撲甚句」の章は、篤志面接委員を委嘱され、刑務所へ短歌の指導に
行った折の一連30首。その中の1首に考えさせられた。


      「よい歌を詠むから良い奴とは限りません」勤続長き刑務官言ひき


1ページ2首組みの贅沢 ? な造り。

詩情豊かな一集であった。

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