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2015年9月 4日 (金)

歌集『蓮喰ひ人の日記』 黒瀬珂瀾  短歌研究社

2011年2月より2012年3月までの異国での日々がうたわれている。

「多民族が集う土地での子育て。異文化の中で過ごした十三ヵ月。」と帯文にも

書かれているように、異国の地で黒瀬は父親になっている。

このたびの『蓮喰ひ人の日記』は、子育てが最大のテーマだと思うが、それだけで

なく、異文化の中で生起したこと、それらを解決したり、処理することによって

歌の幅をずいぶん広げているようにも思う。





『ユリシーズ』の引用については、歯が立たないというか、無知なわたしには
消化できないが…。それは置いといても、ぐいぐいと先を読んでみたくなる
刺激的な歌集である。

子育てといえば、その前段階の歌が前歌集『空庭』(2009年 本阿弥書店)にあった。


         はやう子を作れ、と言ふに頷けり 頷くほかになき昼下り



の、歌を思い出した。この歌には詞書が付いており「老人施設の祖母を妻と見舞ふ」と
あった。





     

           7/4 午後二時六分、長女誕生。於ポートランド病院。三二〇〇グラム。

         さはれ児(こ)は土の恵みか太き根を引きずりおらぶ島のちからで




           8/10 「たぶんおれが悪いんだろう。息子がない。ルーディ。今では

               もう遅すぎる。」(『ユリシーズ』)。

         まだ踏まぬ柔き足裏(あうら)を見せながら唇(くち)より乳首こぼしてねむる





           8/24 妻は学会でエストニアへ。直行便に乗り遅れて、ヘルシンキ経由

               になつたと。初めての指しやぶり。
         

         妻の往くタリンには雨 児のしやぶる指より響く水音しづか

            



そして、読了後の感想としては、変貌ぶりが輝いている。
まぁ、いままでも会うたびに変貌していたが…
(そういえば第一歌集『黒耀宮』(2002年 ながらみ書房)からも、遠く隔たっている。)





「未来」の歌会だったか、ウイッグをつけて壇上に座っていたのは何年前か?



熊本のシンポジュウムでは黒い長いコートをひらめかせ俳優のようであった。



そして、ロンドンから帰国して「未来福岡歌会」に来た時は、リュックを担ぎベビーカーを
押していた。この時の変貌ぶりには魂消た。手つきよくミルクも作っていたし。







等々。伝説のようなお人である〈黒瀬珂瀾〉の『蓮喰ひ人の日記』を読んでいると
何かしら「恩寵」といったことばが浮かんできたりした。


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