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2015年10月26日 (月)

『近代短歌の範型』 大辻隆弘 六花書林

『子規への溯行』(平8)、『アララギの背梁』(平21)に続く三冊目の評論集。

「読ませる評論の書き手」なんていう惹句を勝手に思いついたのだが、

書くことが愉悦のような文章を読むのはたのしい。





      第Ⅰ部  斎藤茂吉に関する論考

      第Ⅱ部  税所敦子・正岡子規・長塚節・石川啄木・島木赤彦らの

             歌人の作品及び論考。

      第Ⅲ部  佐藤佐太郎と前川佐美雄に関する論考。

      第Ⅳ部  山中智恵子・森岡貞香・粕原千惠子・米口實らの作品に

             ついての論考。






近代短歌に焦点をしぼり、その歌の読みについて丁寧な解説及び論が展開されている。

いずれの文章も読みやすく示唆に富む文章ばかりで、マーカーを沢山付けてしまった。

しかし、その文章にも好みというものはあるもので、わたしは以下の章が好きだった。





      心を飛翔させる術(正岡子規)

      彫りの深い作者像(島木赤彦)

      ディレッタンティズムの放恣(中島敦)

      意識流の記述(森岡貞香)

      佐太郎の助詞(「て」と「を」)






たとえば、中島敦の章で書かれていた「うわべだけの視覚的印象として中島の

意識を横切ってゆくだけだ。これらの歌には『こころ』はない。」 あたり、歯に衣着せず

ズバズバと書いている。





近代短歌を御浚いしょうと思うひとにはうってつけの評論集である。

ただ、ちょっと気になったのは、筆が滑り過ぎている気がしたのは、

「確定条件の力」(斎藤茂吉)と「子断ちの思想」(山中智恵子)の章だった。

これは個人的な感想なので何とも言えないが…






それにしても、第Ⅳ章で書かれていた「多元化する『今』」「三つの『私』」は別章を設けて

もっともっと論じてほしかった。

「刹那読み」「物語読み」っていうことを、「三つの『私』」の文章で知った。

若者たちに是非読んでほしい一冊である。



                                 2700円+税




    

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コメント

丁寧にお読みいただき、本当にありがとうございます。

評論集はなかなか読んでもらえず、辛いのですが
こうやって、反応をいただけると、ものすごく励みになります。

ぜひまた、よろしくご指導ください。

ブログ、読んでくださり、ありがとうございます。

このたびの『近代短歌の範型』、とても読みやすく、たいせつな個所にはマーカーを

引いてしまいました。

この評論集は若い方々に是非読んで欲しいと思います。

角川の『短歌』の時評も毎月たのしみです。

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