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2015年10月 2日 (金)

『思川の岸辺』 小池光歌集  角川書店

大きな大きな衝撃となった妻の死、その死から5年を迎えて編まれた第9歌集。

2010年から2013年の作品、542首を収めている。




      ーー略

      二〇一〇年の十月に、癌で妻和子を亡くした。癌が見つかってから、

      闘病二年十ヶ月であった。             「あとがき」より






      仏壇のまへの畳にあかんぼの志野ねむらせし三十年のむかし

      わが妻のどこにもあらぬこれの世をただよふごとく自転車を漕ぐ

      なくなりて三月(みつき)過ぎたるうつしよに「生きて負ふ苦」の雪ふれりけり

      そこに出てゐるごはんを食べよといふこゑはとはに聞かれず聞かれずなりぬ

      ああ和子悪かつたなあとこゑに出て部屋の真ん中にわが立ち尽くす

      昨夜(よべ)つくりし鍋の残りを朝に食ひ残りの残りを昼に食ふなり

      夏になりて水をたくさん飲む猫よのみたまへのみたまへいのちはつづく

      家裏のどくだみ群落はきみを苦しめききみなきいまはわれが苦しむ

      老衰の日に日にすすむ猫とゐてかくれもあらぬ春となりたり

      歳月の過ぎ行くはやさ柿若葉かがやける日はきのふのごとし






1首目の歌は、『廃駅』の「をさな子は来りて睡る仏壇のめぐりすずしき風通ふゆゑ」を
思い出させる。



3首目の歌は、『バルサの翼』の高名な「雪に傘、あはれむやみにあかるくて
生きて負ふ苦をわれはうたがふ」が下敷きにある。




そして、4首目は『草の庭』の「そこに出てゐるごはんをたべよといふこゑす
ゆふべの闇のふかき奥より」に呼応している。




妻を亡くした男のあわれさ、かなしさ、やるせなさが充溢した一集といっても過言では

ないが、1・3・4首目の歌のように、伏線としての歌をわたしたち(?)はすでに識って

いるので、より作品(作者)に対して親しみが湧き、共感する。




10首目の歌を読んだ時に思い出したのは、『廃駅』の「廃駅をくさあぢさゐの花占めて

ただ歳月はまぶしかりけり」だった。




第9歌集『思川の岸辺』は、通過儀礼としての要素を多分に孕みつつ、「あとがき」で

記している「区切りを区切りとして受け止め、さらに新たに前に進まねばという気持…」

なのだろう。





           P・S  『思川の岸辺』の花の歌については、このブログの

                前日にも触れています。



cat    cat

今日の珍事2つ。

16時26分、留守中に入っていたファックスは白紙だった。FAX番号も記載されていず、

どなたが何の用件で入れたのか皆目わからず。どなたさまでしょうか ? ?




「未来」10月号が届いた。
選歌後記を読んでいたら、「福岡県春日原市」とあった。福岡県には春日原市って、
ないんだけどなぁ。そして、「作風から若い男性の方かな……」って、書いてあった。
若い男性 ? ?


   

 

 

 

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コメント

大辻です。たいへん失礼しました。竹山広さんの歌に「春日原球場」というのがあって、それと混同してしまいました。男性の件に関しては未来11月号で訂正しました。すみませんでした。

あら、まぁ。大辻さん、わたしの方こそ揶揄って(笑)ごめんなさい。

男性のこと? は、彼女から聞いていました。

大辻さんは男の人と間違えたみたい…と。でも10月号に掲載してくださったのは喜んで

いましたよ。

このブログは、わたしのツブヤキみたいなもので、あまり真剣に謝られると困るわぁ(笑)

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