« 『香川景樹と近代歌人』 さいかち真 著    続 | トップページ | 歌集『昼の夢の終わり』 江戸 雪  書肆侃侃房 »

2015年11月15日 (日)

『海辺の生と死』 島尾ミホ  中公文庫

奄美群島の加計呂麻島で幼少期を過ごした島尾ミホ。

その幼い日のこと、加計呂麻島での暮しや風物、そして特攻隊長として

島に駐屯した夫、島尾敏雄との出会いを心のままに綴っている。




この書は第15回田村俊子賞を受賞している。




Ⅱ章の「旅の人たち」の、こと細かな描写に島尾ミホの感受性の豊かさが

窺える。そして何より圧巻なのは、胸を締め付けられるようなかなしみと

痛みが描かれている、終戦の前々日、昭和20年8月13日のことを書いている

Ⅲ章の「その夜」。




            

          放したくない、放したくない
          
          御国の為でも、天皇陛下の御為でも

          この人を失いたくない

          今はもうなんにもわからない

          この人を死なせるのはいや
     

          わたしはいや、いやいやいやいやいや

          隊長さま! 死なないでください

          死なないでください

          嗚呼! 戦争はいや

          戦争はいや




「解説」を吉本隆明が書いている。




7月のはじめに訪れた加計呂麻島のことを思い出しながら読んでいたら

涙がこぼれた。特攻艇震洋基地跡、格納庫が今も保存されていた呑之浦(のみのうら)。

そして、島尾敏雄文学碑。

入江の穏やかな水面が甦ってくる。
        

          

« 『香川景樹と近代歌人』 さいかち真 著    続 | トップページ | 歌集『昼の夢の終わり』 江戸 雪  書肆侃侃房 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2032066/62527438

この記事へのトラックバック一覧です: 『海辺の生と死』 島尾ミホ  中公文庫:

« 『香川景樹と近代歌人』 さいかち真 著    続 | トップページ | 歌集『昼の夢の終わり』 江戸 雪  書肆侃侃房 »