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2015年12月20日 (日)

「穀物」第2号

先ず装幀が素晴らしい。

表・裏表紙に跨って意匠を凝らしている。

この木は何の木? 

篠懸(プラタナス)の木と思ったんだけど違うかしら?

表紙の紙質が上品(笑)である。 

同人紹介と奥付のところに少しデザインしているが、なんともこれって素人が

したと思えないほど緻密に計算?されている。


  きみは野の鳥ならねども足音のしづけき靴を選りて会ひにゆく

                                「野の鳥」 小原奈実

  地中まで濯ぎし雨後にかぐはしくたとへば柑橘の交配おもふ

  日暮れにはまだ時ありて蜂は音、蝶は影とぶあざみのめぐり






1991年東京生まれの作者の作品はひとことで言えば、上質の詩情がある。

歌に濁りがない。濾過機で丁寧に濾過されたようなことば遣いであり、素材の

取り扱いかたを心得ている。2首目の下の句、「柑橘の交配」が成功している。

これが胡瓜やゴーヤの交配でなくて良かった。(笑)

3首目の歌もそうだが、「あざみ」を持ってくるあたりがニクイ。






  東京に戻れば胸を撫で下ろすそんな寂しい娘に育つ          狩野悠佳子


  歩兵隊渡りしのちの跳ね橋は光あふれて引き揚げられき        川野 芽生


  死の裾をまっさかさまに落ちていく砂漠のやりきれなさを知ってる   小林 朗人


  おれがここで死ねばサッシの溝は拭かれずに残るサッシの溝の手を取って歩く 新上          

                                                     達也


  ラジオから蝉の声してこんなにも戦前らしい戦後であつた       濱松 哲朗

  自粛といふ圧力もあり、[以下は編集部の判断で削除いたしました]    同


  軍用機作る工場いつの間に増えて翼を作る私は             廣野 翔一


  ライターの命みじかい火をうけて煙草はきみの口許にある       山階  基

  うつ伏せのままにブラシを受けているつつじ団地に生きて死ぬ犬      同







1首目の狩野作品、自身(作中主体)を客観化し得ている。「そんな寂しい娘」の

現状をなんとか脱出したい思いは伝わってくる。


3首目・4首目の、認識?。抵抗感の燻ぶるような歯痒さであろうか。


濱松哲朗作品の5首目・6首目。時代の危機をうたっている。作者にその意図はなかったと

しても、現代という時代を象徴している。


7首目は、2015年夏ではなく「××××年夏」のタイトルが付いているので、なり変わって
詠まれたものだろう。「翼を作る私は」、当時の若者(少年・少女を含めて)たちの声でもある。



最後の山階作品、「つつじ団地に生きて死ぬ犬」は、私(作者)であったかも

知れないような、哀れさが滲む。心地良くブラシを受けているとは思えない諦観が…







と、いうことで勝手な読みで、ごめんなさい。

「穀物」の第1号も手許にあるが、彼等はほんとうに真剣に歌に立ち向かっていることを

改めて感じた次第。

 

        

        

 

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