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2015年12月 7日 (月)

歌集『unknown』 真野 少  現代短歌社

装丁がとてもシンプル。

グレー1色なので、ちょっと見には歌集とは思えなかった。

歌集題は横書き、歌は3首組のもちろん縦書き、380余首収める。

「八雁」所属の1961年生まれのかたで、第一歌集である。





       蛸の足いっぽんいっぽん切り落とし陳列なせり値札をのせて

       《完全に無名なる者》(a complete unknown) 貧困の本質をボブ・ディラン唄いき

       芙蓉切り柿切り松切り八手切り棕櫚と電信柱と残る

       舞い上がる自分を抑うる術知らで「真野」のシャチハタ逆(さかさ)につけり

       同じ道歩きおりしが佐野君は板きれの釘踏みぬきにけり

       社内通報システム成りて通報さるトイレに煙草吸うとてわれは

       たらちねの母の乳房と両切りの煙草はどこまで吸えばいいのか

       わが摘んで束なす土筆あくる日ははやだらしなし頭(こうべ)乱れて

       つまむとき崩れて灰になりそうで骨の上にて迷い箸せり

       コロッケにそそがむとして指先はソースの瓶を突き倒しけり






なんだか面白そうな歌ばかり選んでしまった。後半にゆくに従って面白い歌が
続く。


2首目は《完全に無名なる者》のルビが鉤括弧のなかの a complete unknown  である。
歌集題にもなった1首で、unknown  即ち、無名ということかしら。


3首目は土屋文明の「馬(うま)と驢(ろ)と騾(ら)との別(わかち)を聞き知りて
驢来り騾来り馬(うま)来り騾と驢と来る」の歌を思い出した。
リズム感が似ている。作者は文明の歌も読んでいるようだし、影響 ? かな。


10首のなかには、あげていないが、この歌集には「食う」歌が多い。
それも台北や香港の路地で食べるような<生>と<食>が密接な…。



4首目以下は読んでいて愉しくなったので、あえて選んだ歌。
いずれの歌も解説なしで十分伝わる。そして、何より愉快である。

なんだか人間として吹っ切れている人を想像してしまう。
中年男性(歌人)には珍しいタイプのように思ったが、いかがであろうか。


ちなみにというか、気になったので「八雁」の2015年11月号を開いて読んでみた。
猫の死を詠んだ10首だった。




       猫のため位牌あがなうわれならず本の隙間に骨壺は置く




やっぱり、いいなぁ。

 

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