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2016年1月11日 (月)

『森岡貞香の秀歌』 花山多佳子 砂子屋書房

平成21(2009)年1月30日に亡くなった森岡貞香の生前既刊の8冊の歌集、

『白蛾』・『未知』・『甃』・『珊瑚數珠』・『黛樹』・『百乳文』・『夏至』・『敷妙』と、

遺歌集となった三冊の『九夜八日』・『少時(しまし)』・『帯紅』に収められた

作品のなかより298首を採り上げて鑑賞している。




ゆき届いた鑑賞は、森岡短歌の理解の手掛かりとなるのは勿論だが、

著者・花山多佳子の短歌観ともなって読み手をぐいぐいと引き込む。






     拒みがたきわが少年の愛のしぐさ顎に手觸れ來その父のごと  『白蛾』



        この歌は息子を「わが少年」と呼んだ初めめての作品として有名である。

        ーー略 「愛のしぐさ」という言い方にも驚かされる。ーー略

        「額に手觸れ來」で、その場の生々しさが突出し、さらに「父のごと」に

        「愛のしぐさ」が重なり合い「拒みがたき」に戻っていく、実に緊密な構成に

        なっている。





    をみな古りて自在の感は夜のそらの藍青に手ののびて嗟(なげ)くかな  『百乳文』

               

       ーー略「夜のそらの藍青に手ののびて嗟くかな」はなにかシュールなうつくしさ    

       がある。「手をのばして」でなく「手ののびて」がそう思わせ、「自在」と重なって

       くる。ふしぎな悲哀の表現に打たれる。







著者・花山多佳子はこの書の「序ーはじめに」のなかで、下記のように述べている。


         

        ーー略 日常の何でもないことをうたいながら、言葉と辞がふかしぎに

        動き、意識の在りようとしての時間と空間の奥行きを創出していることに

        驚かされる。それはある意味現代短歌のもっともラディカルな行き方とも

        いえる。ーー略






森岡貞香の作品は難解というレッテルを貼られがちであったが、著者の鑑賞を読むと

その一つ一つの謎が解けてゆくような快感を味わうことができる。

そして、思うのは森岡がここまで辿り着くまでの試行錯誤(?)というか、努力が

偲ばれ、やはり、すごい歌人だったのだと改めて思ったりした。





引用歌は巻末に掲げられ、年譜も付けられているので、森岡短歌に興味のある方には

とっておきの一冊となっている。

 

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