さようならが機能をしなくなりました あなたが雪であったばかりに
「二〇〇九年一月二十四日早朝、二十六歳の若さで突然旅立ちました。」
笹井宏之さんの第二歌集『てんとろり』(書肆侃侃房 2011年1月24日発行)の
序文の筒井孝司(笹井さんの父君)さんのことばである。
さようならが機能をしなくなりました あなたが雪であったばかりに
たましいのやどらなかったことばにもきちんとおとむらいをだしてやる
かなしみにふれているのにあたたかい わたしもう壊れているのかも
あこがれがあまりに遠くある夜は風の浅瀬につばさをたたむ
雪であることをわすれているようなゆきだるまからもらうてぶくろ
次々と涙のつぶを押し出してしまうまぶたのちから かなしい
はじまりのことばがゆびのあいだからひとひらの雪のように落ちた
本当は誰かにきいてほしかった悲鳴をハンカチにつつみこむ
『てんとろり』の序文で、父君の筒井孝司さんは「キラッとしたガラスの砕けるような
研ぎ澄まされた韻が、またあるときはふわっと温かく包み込んでくれるような
やわらかな響きが伝わってきます。」と、記している。
笹井さんの歌は、穢れたわたしのこころに沁みわたる。
笹井さんの歌を読むと、どこかに捨ててきた、忘れてしまったこころを取り戻す。
今日は笹井宏之さんの祥月命日です。
朝から博多の街も雪が降っています。
これから雪の中をすこし歩いてきます。
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恒成 様
いつも宏之のことを心にとどめていただきありがとうございます。
7年の歳月が流れました。
あの日も今日と同じように白い一日でした。
『些細』のブログに紹介させていただきたいと思いますので
よろしくお願いします。
これからも変わらぬお付き合いをよろしくお願いいたします。
筒井孝司 和子
投稿: 筒井孝司 和子 | 2016年1月24日 (日) 19時27分
ブログを読んでくださって、ありがとうございます。
真っ白に積もった雪を眺めながら一日を過ごしました。
笹井さんがお亡くなりになられて7年でしたね。
天国で今日の雪を見ているのでは、などと思ったりしています。
今頃、どんな歌を詠んでいるのでしょうか。
投稿: miyoko | 2016年1月24日 (日) 19時35分