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2016年4月18日 (月)

歌集 『バスを待つ』 牛尾誠三  六花書林 

「短歌人」所属の第一歌集。

       

          ーー略 自分がどのような歌を作っているかということは、毎日を

          どのように生きているかということの反映であると、作った歌を読み

          返すたびに思い知ります。ーー略      「あとがき」より





「公務員とふ職業に四十年身体も心も軋み合ひをり」(注・現時点ではすでに定年退職)と

うたわれているように、心の軋みが多くうたわれており、自らを凝視める内省的な歌が

印象深かった。






         肩書きは小さきがよし無きがよし朝の散歩に切通し越ゆ

         働きて眼に見える「もの」増えてゆき眼に見えぬ「もの」失つてゆく

         人はみな等間隔に素粒子の配列のごと生きて在るらむ

         剥がしてもなお纏ひつく自意識を好い加減にせよと今日も叱りぬ

         底抜けに善き人てふは困るもの腹が立つやら悲しいやらで

         振り向けば傍らにもう誰もゐず坂道だけが続いてをりぬ

         十六年飼ひたる犬の死にゆくを金土日とただ見てをりぬ

         俺たちは何を相手に闘つて何を悲しみ涙ぐむのか

         このごろはお寺の前の掲示板に書いてあるやうな歌作りをり

         時々の年齢のまま穏やかに過ごせばいいのに何を抗ふ




いずれの歌も真っ正直な作者の思いであろう。

それだけに心に響く。誰も誰も何かを背負い、その何かを背負いきれずに、

逃げ出したり、折り合いをつけて生きているのだろう。

9首目の歌の「お寺の前の掲示板に書いてあるやうな歌」だって、

自身を鼓舞するためには必要とも思う。

        いろいろなことがあるけど起き上がり歌つくることで救はれてゐる

                               2016年4月21日発行  2400円+税

 

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