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2016年4月27日 (水)

鈴木香代子歌集『青衣の山神』 ながらみ書房

1990年「心の花」入会の著者の第一歌集。

栞文を時田則雄・小池光・栗木京子の三氏が執筆し、解説は谷岡亜紀氏が書いている。

Ⅰ・ⅡⅢ・Ⅳ章とあり、ⅡⅢ章には伊那谷の風土になじんだ暮らしがうたわれている。

Ⅳ章は学校現場からの歌。





一集読み通して思ったのは、Ⅰ章の母子抒情が淡く、従ってⅡⅢ章から後半のⅣ章の

歌により一層迫力があったことだ。







        婚なさぬ悲しみあれば婚結ぶ悲しみありて秋桜ゆれる

        気がつけば行く道来た道寂しくて夕焼けのなか少し泣きたい

        ペンダントに海ひとしずく閉じ込めて息子今まだわたしの子ども

        揺れまいと強情なればちかちかとカランコエの黄がまたたきかえす

        葵の上をとり殺す激情いまならばわかる気がする中年前期

        清明な九月来たらず生ぬるき口移しの水のごとき溺愛

        遊園地に待機の時は終わりたりもうすぐ夢の時間も終わる

        母性にも体力が要る夕暮れの母はぐらく゜ら疲れておりぬ

        「何故ここにこの子がいるか」眼前に問うはかなさの圧倒的風力

        奔りだす心つなぎ留めんと抱えればいのちごうごうと滝の音する






Ⅰ章の浄化された歌から、

4首目の「強情」、5首目の「激情」と感情の強いことばが出ることによって、

かえって生ま身の著者が感じられたりした。




7首目以下はⅣ章の教育現場からの歌。

8首目の「母性にも体力がいる」の認識は借り物ではなく、それこそからだで

感じとったことだろう。

そして、9首目の「圧倒的風力」に対して、ただただ無力なのだろう、か。

現代の教育現場のやりきれなさが伝わってくる。

10首目の歌は、せつない。「ごうごうと滝の音する」、いのちを抱きしめてやることしか

手だてがないのだ。


         青衣また雪衣まとえる山神(やまつみ)に花かかげつつ人は舞うなり

                                2016年4月23日刊   2600円税別

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