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2016年4月14日 (木)

『神のパズル』 大口玲子  すいれん舎

巻頭の「神のパズル」100首の連作は、歌集『ひたかみ』(雁書館 2005年11月刊)に

収められたものであり、初出は、2004年12月刊行の雑誌「ガニメデ」に掲載されたもの。

この連作は、女川原子力発電所を見学したときのもので、当時原発から20キロ弱の

場所に住みながら、自分が被曝の当事者となる可能性についてはかなり楽観的だった

ことを「あとがき」で述べている。

        「原発」と「原爆」の違ひ書かれあるパネル見てをり案内を聞かず

        廃棄物処理して処理して処理してそののちのことわれは訊かざる






そして、2011年3月11日の東日本大震災、その後の原発事故。

その原発事故によって作者の生活は一変した。

それは作者一人のみならず、多くのふつうに暮らしていた人たちの暮らしを根底から

揺さぶるものであった。

集中に収められている講演記録(2015年11月28日)には、当時の作者の気持ちが

真摯に語られている。


        ーー略 「避難」と言ってしまうと、避難の必要を感じていない多くの人との

        軋轢を生むようで、どこか自粛するような雰囲気もあったように思います。

          私自身も「疎開」と言っていた時期もあるのですが、「疎開」というのは

        どうも戦争中に田舎に逃げるようなイメージで、それとも違うと思ったり

        しました。「疎開」とか「避難」よりも色のない言葉として、単に「移動」と言って

        いる人もいました。私は、去年から家族三人で宮崎に住んでいて住民票も

        移しましたので、今は「移住しました」と言っています。





住む地を選ぶ、そのことさえ、かようなまでに言葉に気遣いをしたのかと思う。

        いくたびも「影響なし」と聞く春の命に関わる嘘はいけない

        「福島の人は居ませんか(福島でなければニュースにならない)」と言はる

       福島で生きる母親に強さありその強さに国は凭れかかるな

                              『桜の木にのぼる人』(2015年刊)より。





ところで、

今朝(4月14日)の朝日新聞で知ったのだが、「第25回丸山豊記念現代詩賞」に

那覇在住の詩人、白井明大さんの第5詩集『生きようと生きるほうへ』(思潮社)が

受賞した。



白井さんは、東京電力福島第一原発事故を機に東京から母の故郷の沖縄へ家族で

移住。その受賞の言葉は次のようなものであった。(新聞の掲載による。佐々木亮 執筆)




      沖縄に避難した後、「被災地じゃないのになぜ東京から逃げたのか」と問われた

      経験から、「このような問いに直面しているのは自分だけではないだろうと想像

      しました。この問いに含まれる批判的な響きや、その問いに追いやられる側の

      逃げ場のなさは、今回の詩集で書きたかったものです」

 

 

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