« 歌集『九年坂』 田上起一郎  六花書林 | トップページ | 橋の名前 »

2016年7月21日 (木)

『ノラや』 内田百閒 中公文庫

百閒先生の『ノラや』を読み返す。

(わたしの心の隙間を埋めてくれるだろうか。)


       ノラや、お前は三月二十七日の昼間、木賊の繁みを抜けて

       どこへ行つてしまつたのだ。それから後は風の音がして雨垂れが

       落ちてもお前が帰つたかと思ひ、今日は帰るか、今帰るかと

       待つたが、ノラやノラや、お前はもう帰つて来ないのか。

野良猫の子のノラ、ある日を境に消えてしまったノラ。

ノラを待って、待って、百閒先生の心は千々に乱れ、嘆き、悲しみ、

家出したのちの、来る日も来る日も日記に綴る。






       七月二十日土曜日 ノラ116日

       曇 薄日 夜半過から雨

        夕方近く千駄ヶ谷の動物愛護協会へノラを探しに行つたが、

        無意味であつた。愛護協会と云ふのは猫や犬を「眠らせる」

        つまり殺して始末する所の様である。






ノラ探しの第四回目の新聞折込みのビラ、5500枚。

ノラ探しに英文広告まで作る百閒先生。

ノラのために、精魂をそそぐ百閒先生は尊いというより、コワイ。

(これほどの執着心を持ち合わせていない、わたし。)

       

« 歌集『九年坂』 田上起一郎  六花書林 | トップページ | 橋の名前 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2032066/66614544

この記事へのトラックバック一覧です: 『ノラや』 内田百閒 中公文庫:

« 歌集『九年坂』 田上起一郎  六花書林 | トップページ | 橋の名前 »