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2016年8月14日 (日)

『三池炭鉱 宮原社宅の少年』農中茂徳  石風社

昭和30年代の大牟田、三池炭鉱の宮原社宅での少年の日々が

生き生きと再現されている。

テレビもまだ普及していなかった時代の子どもたちの遊び。

社宅には風呂はなく、共同風呂に通っていた。そこでのエピソード。





少年時の回想のかたちで綴られているが、その中の会話が筑後(大牟田)弁

なのが心地良い。たとえば「かてて」の言葉。「かててやる」というのは、

加えてあげるという意味で、みんなの遊びに加わりたい時は「かてて」と

言って、仲間に入っていた。(大分弁でも「かてて」はつかっていたような…)







社宅の外や周辺のことを塀の外という意味で「外(がい)」と言っていたこと。

当時は違和感もなくつかっていたが、そこに排除の論理が潜んでいるとも

気づかずにいた、と後年書く。

      塀の中こそが世界の中心であるという認識が、私の中に形成

      されていたとしても不思議ではない。少なくとも私は、排他的で

      閉鎖的な体質を内面に醸成しながら育っていたのだと思う。



少年(ノリちゃん)とタカちゃんの友情。

運動会の日に母が家出してしまったこと。





少年時代の回想が単なる自分史に終わらず、三池争議をはさむ激動の

社会史となっているのがこの書の特徴。






個人的にだが、わたしが泣いてしまった個所は下記。







       やがて、母がつぶやくように言った。

       「しげのり、一緒に死んでくれんか」

       私は驚いた。突然の、信じられない言葉だった。

       返す言葉が見つからない。

       「どうして?」と訊くのも怖かった。

       下を向いたままかろうじて返事をした。

       「まだ、ぼくは死にたくない」








                        1800円+税   2016年6月10日

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