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2016年8月15日 (月)

高橋元子歌集『インパラの群れ』 現代短歌社

2015年11月「パブロフの犬」300首により第3回現代短歌社賞を受賞した

作者の第一歌集。アフリカの草原を駆けるインパラに高校生の姿を

重ねあわせ『インパラの群れ』の歌集名としている。


   校舎より高くなりたるけやきの木若葉に風のすぎゆくが見ゆ

   入学のをみなごのやうに新しきくつを買ひたり転勤の日に

   そんなところに隠れてゐないで出ておいでむかしの私が教室にゐる

   かどかどしき言葉のならぶ法令集加除をするなり枝葉(しえふ)のページ

   インパラの群れのやうなる生徒らの朝の階段をかけのぼりゆく

   授業用包丁を買ふ四十本の柄に印したる通し番号

   三度目のお知らせなるに印刷の用紙の色はイエローにする

   托卵のやうに仕事のまはされて何はともあれやらねばならぬ

   足柄も不破関(ふはのせき)をもひとつとび筑紫まで来つあづまをみなの

   電子辞書にあぢはへぬもの古書店の紙のにほひと時間のにほひ

    




『インパラの群れ』には、仕事の歌(教員を支えて事務を担当する、

学校勤務)が、多く収められている。働く現場からの歌は、4首目、6首目、

7首目、8首目といずれの歌も具体的であり、その仕事の多様さと

忙しさが伝わってくる。




6首目の歌にあるように、40本の包丁に通し番号を入れるとは、誰にでも

うたえる素材ではない。と、同時にその素材を表現として完結させるあたりは

序文で外塚喬氏も触れているが、作者の感性に負うところが大きいだろう。






定年後の現在は、旅をしたり絵画を鑑賞したりと素材の広がりを見せている。

9首目の「ひとつとび」が愉しい。

そして、最後の10首目の歌は、本好きならではの「紙のにほひと時間の

にほひ」が、巧まずしてうたわれている。






                     2000円(税込)  2016年8月25日発行

   

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