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2016年9月 6日 (火)

歌集『月齢暦』 熊村良雄 青磁社

「前衛、アヴァンギャルド……/このような言葉が聞かれなくなって久しい。/

しかし、ここにその余燼を燠火のように護り続けた一人の歌人がいた。」





帯文を抄出したが、的を射た称賛の言葉である。

そして、わたしは、3000字近い「あとがき」の文章に酔わされてしまった。

      -略-

       若い時にはなぜか詩歌などにはあまり関心がなかった。今頃に

      なって歌など始めたのは、ソクラテスではないけれども、何か

      気づくことがあったのかもしれない。早い話が、自責の念である。略






結社に入っているのか、どうかも定かではない。

略歴らしいものはどこにも書かれていない。

ただ、「短歌は五十歳をすぎてから始めたが…」と、あとがきに記されている。






     うまれたくて生まれたんじやないなどと谺のやうなことを言ふなり

     一周忌三回忌七回忌……十進法などもうまにあはず

     大音声に父が見てゐる時代劇とてもこの世のことと思はれず

     聖人は悪人なりとよ たましひの勧誘になぜ子を連れてくる

     自宅(いへ)にゐて家(うち)に帰ると言ひにしかよくあることと

     手引(マニュアル)きにあれ

     四海同胞の舗(みせ)ならむとも蛸よモーリタニアといふはどこか

     アクロポリスみずて死ぬべしあかねさす朝顔の藍の私語(ささめごと)

     かの室(へや)に漏れにし声もかへりこよ窓に射す日の余りあること

     何のためであらうと映像の皇帝ペンギンの長き行進

     余生などあるものならば何せむや貴女(あなた)の知らぬあなたに

     逢はう


取り敢えず10首あげてみたが、塚本邦雄からの影響?と思われるものが

ないでもない。7首目、9首目などは塚本が射程に在るともいえる。

しかし、塚本よりも<私>性が濃いともいえる。それは、①②③⑤首目の

歌などから、背後事情を読み手が想像したくなる(?)手法がとられて

いるからである。

まぁ、とにかく重厚な一集には間違いない。

第一歌集ということで更に驚いた次第。

                    2500円+税  2016年7月16日





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