« 歌集『蜻蛉文』 結城千賀子  現代短歌社 | トップページ | 「探し物」をしている時間 »

2016年9月27日 (火)

『一語一会』 櫟原 聰  ながらみ書房

「一期一会」ならぬ『一語一会』に込めた著者の思いを鑑みながら繙く。

櫟原さんといえば、古歌に詳しいひとのイメージがある。

前著に『古歌の宇宙』(不識書院 2014年4月)があり、遡れば2001年に

雁書館から『古代和歌から現代短歌へ』(2001年7月)を刊行している。

(この書は、雁書館の編集者でもあった小紋潤さんの装幀である。)



このたびの著書で目新しい?と思ったのは、Ⅲ章に「口語短歌の文法序説」

が、あったことであり、個人的にはこのⅢ章がいちばん興味深かった。

以前、話題になった服部真里子の「水仙と盗聴…」の歌を明快に分析。

今迄、歌壇の雑誌などで「水仙と盗聴」の歌は数多くの人たちが論じたもの

だが、櫟原さんの考察がわたしにはいちばん理解しやすかった。


   --略 話題となった服部真里子の「水仙と盗聴、わたしが傾くと

   わたしを巡るわずかなる水」は、「水仙と盗聴」が序詞的要素をもち、

   「水仙と盗聴(のように)ーー傾く」と見ることができるのではない

   だろうか。「盗聴」は耳を傾けて聞くことだと理解できる。「水仙」には

   ナルシスのイメージがあるのかもしれない。だとすればまさに「傾く」

   姿勢が「水」と関係するのである。「水仙」と「盗聴」はまさに俳句的

   取り合わせなのだろう。ーー略







作者である服部真里子さんがそこまで論理的に考えて作ったのではないかも

しれないが? 

櫟原さんの言わんとしている「序詞という短歌特有の技法・文法により、

文法的に解きほぐすことで理解しやすく」なったとも思う。





このⅢ章には「主語・述語の把握」、「修飾ー被修飾の関係」、「単文か

重文か複文か」なども収められているが、もっと拡大化して論じて貰い

たかった。




と言うのも、主語・述語の捩じれ?など、このところ散見するし、そのあたりの

例歌を示しながら、もっと考察してほしかった。






    若手歌人を中心として口語短歌が急速に普及し、従来の文語

    短歌にとって代わろうてしている。ここにあらたな口語短歌の

    文法が必要になりつつあると思うのである。

                   「口語短歌の文法序説」の冒頭のことばより






                     定価2500円    2016年9月20日発行










      

« 歌集『蜻蛉文』 結城千賀子  現代短歌社 | トップページ | 「探し物」をしている時間 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2032066/67693467

この記事へのトラックバック一覧です: 『一語一会』 櫟原 聰  ながらみ書房:

« 歌集『蜻蛉文』 結城千賀子  現代短歌社 | トップページ | 「探し物」をしている時間 »