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2016年10月 3日 (月)

『無縫の海 短歌日記2015』 高野公彦  ふらんす堂 

平成27年1月1日から12月31日まで、1日1首ずつ詠み、合計365首を

収めている。

ふらんす堂のホームページでの短歌日記。
(このシリーズは、現在 栗木京子氏が毎日更新している。)


   一人なる夕餉を終へて俎板の使はなかつた裏も洗へり

   茱萸坂に小高氏の影無きことを悲しみをらむ黄泉の小高氏

   七十を過ぎていづれも寂しけれ本を読む日と本を読まぬ日

   〈臆病〉がわが人生に良き鏡になりしと思ひ否(いな)とも思ふ

   便利にて軽くて渋味の無き口語その歌ツーバイフォーの如しも

   古稀すぎてわれは愛(を)しめり良き仕事しつつ目立たぬごろごろ野菜

   この函は妻の柩を乗せしことありて静かに日々昇降す

   乗り越して深夜の街をふらふらと老いたる〈酒の又三郎〉ゆく

   大通りのろのろ渡る老爺ゐてあの人われのドッペルゲンガー

   椹(さはら)の木柩となりて斎場の竈々(かまどかまど)に今日も燃えゆく








1首目、「使はなかつた裏」がいい。その使わなかった裏も律儀に洗う作者。



2首目は、2014年2月11日早朝、千代田区の事務所で急逝した小高賢氏を

      悼む歌。この「茱萸坂」は小高氏が生前デモに通っていた永田町

      1丁目の国会議事堂の南側を東に下る坂。小高氏の遺歌集の

      タイトルは『秋の茱萸坂』である。小高氏の歌によって随分

      歌人に知られるようになった坂でもある。




3首目、「いづれも寂しけれ」とあるので、読む日も寂しいが、読まない日も
     寂しいのだろう。本好きな人でなくてもこの心理は伝わるであろう。




5首目は、「ツーバイフォーの如しも」は、建築の様式の一つでこれによって

      強固な?家になったとも言われているが、この歌では、比喩が肯定

      ばかりでもなさそうに伝わってくるのはわたしの穿ち過ぎか?

6首目の「ごろごろ野菜」は、がめ煮、別名・筑前煮とも呼ばれている。九州

     北部地方の郷土料理。鶏肉と根菜を煮込んだ料理で、作者は好物

     みたいだ。

8・9首目は、自身を客観している。これだけ客観して歌に出来るのは、

        まだまだ余裕がおありのようで……




7首目は、日常で目にするエレベーターだが、それだけに思い出す妻の柩

       のことだろう。





10首目の歌は、柩が椹(さわら)の木で作られることをはじめて知った。

          そういえば、俳人の池田澄子さんの句を思い出した。

          「雪の山私の柩になる木どこ」、せつない句だが、高野氏の

          歌もあとを曳く歌でしんみりしてしまう。








この短歌日記の歌は、それぞれに詞書が付いている。

このブログではその詞書を端折ってしまったが、詞書だけでも愉しいのが

幾つもある。そして、高野氏のシニカル?な目も。

         歌碑の好きな人が多い。どうやら歌集を余り読んでいない

         人ほど、歌碑を見に行きたがるようだ。  (8月16日)






         毎朝七時五十三分、テレビの「きょうのわんこ」を楽しみに

         している。                    (9月16日)

         優れた口語歌を作るには、優れた文語力が必要なのでは

         なかろうか。          (9月10日)引用歌5首目の詞書







                       2000円+税  2016年5月20日刊








cat       cat

10月になってしまった。

土曜日(1日)は、未来短歌会の福岡歌会。新作5首持ち寄り。
           


昨日の日曜日は、戸畑区文化祭短歌大会だった。

昨年にもまして秀歌が多かった。

 

 

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