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2016年10月13日 (木)

歌集『花片』 細溝洋子   六花書林

2007年、第18回歌壇賞受賞の細溝さんの『コントラバス』に続く第2歌集。

歌集タイトルは「本物でなくてもいいよ五月雨に白き花片をぬらす

ニセアカシア(アカシア)」から取られている。なお「花片」は「かへん」と読む。

    ああわたし人の話を聞いてない電話の中で声がぶつかる

    こだま-(ひく)のぞみ=(の)六十八分のために選んでいるミステリー

    旅の夜の眠り浅くてわが心こつんこつんと何かに当たる

    落ち葉掃く和尚は見えず紫陽花の咲ける現(うつつ)の瑞泉寺ここ

    「誓います」息子の声の響きたり乱反射する記憶のひかり

    「恋チュン」を最前列に踊れるは新郎にして私の息子

    問題は私自身と気づくまで水族館の回遊魚たり

    「それにしましても」という丁寧語無敵にて軽くねじ伏せらるる 私も

    若きらと歩く楽しさ人生にまだたっぷりと時間があって

    ロシアンブルーの一枚のみが残されてなかなか来ない猫年を待つ



1首目、電話で話している時、相手の声と被ってしまうことがある。わたし

     などもやらかしてしまうのだが、相手の話をゆっくり聴くことを

     していないのだと気付く。内省の歌。



2首目は、68分間、こだまの方が長くかかると思ったのだが、どうだろうか。

      その68分間を消化するためにミステリー小説を持参するのだ。



4首目の歌、瑞泉寺といえば、大下一真和尚さんかしら。この一つ前の歌が

        「北鎌倉の中の三つのK音を確かめながら改札を出る」とある。



5・6首目の歌は、息子さんの結婚式のようである。誓いの言葉を聴きながら、

       幼いころの息子のことや、いろいろな記憶が甦るのだろう。母親の

       情(じょう)のたっぷりとして言い放つ「私の息子」。羨ましい(笑)




9首目の「まだたっぷりと時間があって」は、最初作者の時間かなと思った

    のだが、これはたぶん「若きら」のことだろう。時間に齷齪せず、

    歩いている若きらと過ごすのは、心地いいような。

最後の歌は、干支には「猫年」がない。十二支の第11番目には「犬」が

         あるのに。「ロシアンブルー」の色合いがいい。








華甲を祝してのご出版と想像したのは、奥付の日付に依る。

すてきに年齢を重ねていることが歌から伝わって来た。






                        2016年10月12日   2400円+税
    

 

 

 

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