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2016年11月27日 (日)

『哀悼』 福島泰樹歌集 皓星社

福島泰樹さんの29番目の歌集は、早稲田短歌会以来の歌友

黒田和美さんに捧げる一集となっている。





著者本人が撮影したカバー写真は、簡素な部屋にピアノが置かれている

モノクロの仕上がり。装幀は山崎登氏。

ハードカバー装で、表紙は黒。タイトルと名前は白抜きの文字。

扉もまた真っ黒でタイトルと名前が白抜きとなっている。

歌集題の『哀悼』が示すように故人を悼む歌が数多く収められている。

黒田和美さんは勿論、吉原幸子・吉本隆明・冨士田元彦・河野裕子・

村上一郎・諏訪優・武田百合子・辺見じゅん・塚本邦雄氏等々。



そこで、思い出したのだが、岡井隆氏が福島さんの『遙かなる朋へ』に書いた

解説が、もう40年近く前なのに、今度の歌集『哀悼』にも相通じるのだ。







       福島の歌は、今度の本(注『遙かなる朋へ』昭和54年5月刊)の

       題名が語っているように、つねに誰かへの〈メッセージ〉である。

       このことは、(誰の歌でも多少ともその気味がないわけではない。

       しかし、福島は、その点を増幅しているという意味では)福島が

       すでにして。その歌の把握のしかたにおいて、ものの極端を

       行っている証拠でもある。すなわち、ラジカルなのである。ーー略

                 『遙かなる朋へ』の解説 より    岡井隆







         吉原 幸子

       掌の中の風よ、小鳥よ、あ丶そして握り損ねた夢の数々


         吉本 隆明

       「よせやい」と叱られて聞く中也論 白い木槿が咲く午後だった

         冨士田元彦

       歳月は霧にまみれて遠山の金さんあわれ花吹雪せよ

         河野 裕子

       悲しみは枝から落ちる夏蝉か 病葉なのか分からなくなる

         村上 一郎

       浪漫者の崖(きりぎし)なれど花なれど三月念九 桜吹雪かず










そして、詩人・諏訪優をうたった「夜の凩」は、さみしく、せつなく、かなしい

一連だった。(わたしは、この章が好き。)






        薔薇色に耀う詩人のはげあたま 諏訪優いずこ路地に風吹く

        竹藪に囲まれ木造アパートの百姓地主の隠れ家に住む

        朝っぱらから飲んで歩いて放埓の 大給坂から団子坂まで

        真っ青な刃物のようにひかる魚たそがれに酌む晩酌のため







さいごに、黒田和美さんを哀悼して。

       遠い夜のあなたの家の団欒の グランドピアノ黒鍵ばかり









                       2016年10月30日  2000円+税

 

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