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2016年11月29日 (火)

『続 森岡貞香歌集』 現代短歌文庫 砂子屋書房

2009年1月30日に逝去した森岡さんの『森岡貞香歌集』(2016年3月刊)の

続刊。亡くなられてからも『九夜八日』・『少時』・『帯紅』と単行歌集も出版

されている。これは、ひとえに森岡さんのご家族(ご子息)の並々ならぬ

愛情と、一人の歌人の功績をこの世にとどめたいというお心であろうか。






さて、このたびは『黛樹』・『夏至』・『敷妙』が全篇収められている。

この全篇収めているのがいい。

『敷妙』より5首抄出。





     水切りををへたる薔薇(さうび)が青き葉の七枚となり蕾にしたがふ

     川といふしろきひかりのよぎりけるわが乗るくるまただに過ぎるなる

     變らざる日日の過ぎ方蛇口をば走りいでこし水はコップに

     敗けいくさに見しありさまはわが生にしるされしまま生も悲しも

     死ぬるにも何なさむにもなすことのなきと言ひさしてねむりし







1首目、結句の「蕾にしたがふ」がユニークな把握。



2首目、作者が乗っている車なのに、その車を俯瞰しているような歌。

     このような切り取り方の歌が森岡さんには多いような。

     主体が1首の歌からはみ出し、客観している?

3首目、蛇口を捻って水を出したというだけの歌なのに、「蛇口より走り

     いでこし水」にいのちが宿るような衝迫がある。これをしを森岡調と

     いうのかしら。




4首目、敗けいくさによって、夫は戦後亡くなり、遺された息子との暮らし。

    うたい残した歌の〈生〉。それもまた悲しい。




5首目、99歳の母君のことであろうか。

     「死にてゆく母の手とわが手をつなぎしはきのふのつづきの

      をとつひのつづき」の歌がせつない。









歌論・エッセイが13篇あり、そのいずれも森岡さんらしい視点がある。

その中でことに印象深いのは「覚書き・文化としての短歌と歌人」の章。

清水千代を初めて見た時の衝撃?。五島美代子の軽井沢の別荘を買う

話など、この世離れしていて、面白い。

当時の女流歌人の、歌人社会(?)を、森岡さん独自な怜悧な目で捉え、

活写していた。







                       2016年11月19日  2000円+税
  

 

 

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