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2016年12月29日 (木)

短歌同人誌「穀物」 第3号  つづき

昨日取り上げていなかった同人4名の歌。

       きさらぎの錫の光の朝々を裸身にて木は奔りゆかずや

                                  小原 奈実

       あたたかな窓は旅して何度でも電子レンジが見せる夕焼け

                                   狩野悠佳子

       纏うのは水とすこしの蝋燭とうつろいそして散るものの羽根

                                   小林 朗人

       日差しが窓に差す 窓に差すということを告げるためカーテンが

       ふくらむ                       新上 達也


さて、26ページに及ぶ特集の座談会「短歌とは生きてゆくための深呼吸」を

熟読。座談に参加したのは川野芽生・小林朗人・濱松哲朗・廣野翔一・

山階基と書記として新上達也が加わる。

この座談会はあらかじめ質問事項を各自に出している。

何しろ長い長い座談なので、ピックアップして紹介。






       --略 逆に言うと不自由すぎて逆に自由を感じるっていうのが

       やっぱりあって……              廣野 翔一 

 

       定型がない自由さというのは広々とした荒野に放りだされた

       ようなもので、不自由であるからこそ、その奥深くまでいける

       何かにたどり着こうとしやすいという実感があります。

                                  小林 朗人 



 

廣野も小林も短歌の定型・五句三十一音という枷を不自由の中の自由と

感じとっている。現代詩の自由さは「茫漠たる原野」みたいだと、わたしなども

かねがね思っていたので、二人に納得。



       『小さなヴァイオリンが欲しくて』がなぜ切迫したような感傷さえ

       読者にもたらすのかっていうと、永井さんが実人生を生きてきて

       感じたものをフィルターにかけて濾過して、実人生っていうものを

       捨象して歌にしたからだと思うんだよね。--略

                                   濱松 哲朗


 

 

       作者の実人生と短歌の関係性は、調味料と料理っていう関係と

       似てそうですね。                 山階   基 







作者の歌と、実人生の関係。

これは、今後もっともっと論議されるかもわからない。

個人的に言えば、わたしなどは、作者の実人生があって歌はそれに

寄り添うものだと思う方なので、架空の人生などをうたいたくはない。

そうまでして、短歌を作りたくないのだ。






ただ、濱松が永井陽子の『小さなヴァイオリンがほしくて』を読んで感じた

ように、「濾過して、……」ってことはだいじなようにも思う。実人生べったり

だと、日記とかわらないしね。

       文学には文学の倫理があるというか、社会にあるものは倫理と

       いうよりマナーだから、文学の倫理こそがそのマナーを超えて

       いかなきゃいけないんだって思うんです。 

                                   川野 芽生

川野の言う「文学の倫理」は、難しくて悩ましい問題でもある。

彼の歌もそうだが、先の先の方を歩いている孤独な(孤高な?)背中が

見えるばかりだ。






なんだか頼もしい若者たちであることよ、と感心しきり。








この座談の最後の方で、川野が「私は短歌をやめても、この世界全部不自由

だから行く先がないなって思ってます」と言えば、すかさず濱松が「私も最後

に残ったのがここって感じなので、行くあてないですから……」と応じるし、

廣野は「俺もそうです」と同調するし、山階が「えっ、なんでみんなそんな

背水の陣になっとるん……?」と、茶かすオチは、愉しくもせつない。




短歌を40年も続けているわたしとしては、「あ~あ、わたしに残ったのは短歌

だけ。短歌しかないのね。」って、人生を終える時に言いそうだ。

でも、短歌があって良かったとつくづく思う。

短歌があることで、どれだけ精神のバランスがとれたことか。










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このブログはしばらくお休みします。

1年間読んでくださった皆さまがたにお礼を申し上げます。

どうぞ、良いお年をお迎えください。


                       2016年12月29日  miyoko    cat

 

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