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2017年1月31日 (火)

歌集『一心の青』 寺島博子  角川書店

2011年から2016年上半期までの370首を収めた著者の第四歌集。

「朔日」短歌会所属。

     地のしづくとなりて跳ねたり鶺鴒はわづかにみどりの残る芝生に

     しめりたる鼻先もてるさ牡鹿(をしか)がわれの眠りのふちにあらはる

     グレゴリウス暦が立秋を記せる日こころは影のやう水のやう

     風の蔵、火の蔵、水の蔵をもつをみなの体コートにつつむ

     春の来た証であらう沸騰の音が何だか耳にやさしい

     感情のさざんくわ理性の椿などと言ひながら冬の最中を過ぎる

     呻吟を重ねゐるとき見えてくる露草の青と思へばはかな

     歌(うた)ひ女(め)を一人づつなかにをさめゐむ水仙咲けり茎

     しなやかに

     ひたすらに孤独であれと言ふ人の言葉のやうにぶだう輝く

     草木染めのストールまとひ草木の一心の青にわれは近づく







著者の『白を着る』(第二歌集だったか?)を読んだ時、ほんとうに〈白〉が

似合う人だと思った。色が白くて、清潔感のただようひとと、初めてお会いした

時に思った。

このたびの歌集を読んで、7首目の「露草の青」、そして10首目の「一心の青」

と「青」に親和していることに気付いた。

そして、6首目に「感情のさざんくわ理性の椿」というフレーズがある。

山茶花と椿が、感情と理性の対局にあると考えるところが著者らしくもある。

椿=理性という発想が、斬新である。

8首目の水仙の花のなかに「歌ひ女」が居るというのも、浪漫がある。

このような思考の持ち主はやはり詩人なのだろう。

2首目の歌などにわたしはエロスを感じるのだが、そのエロスも大胆なもの

でなく、実に慎ましい。

「一心の青」は、母の亡くなる十日ほど前に詠んだ一連だと「あとがき」に

記されている。しかし、母のことと結びつけて、読まなくてもこの一首だけで

充分自立していると思う。

この歌集を象徴するような歌ではないだろうか。



                          2017年2月9日 2600円+税

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