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2017年2月 5日 (日)

『お月さん、とんでるね』 夏野いづみ著  銀の鈴社

「お月さん、とんでるね」と吾子が指す夕べの空にプラチナの月

著者、夏野いづみさんの短歌である。書名はこの短歌からとられている。

副題は「点頭(てんとう)てんかんの娘と共に生きて」。




夏野さんは、1993年6月~2006年6月の13年間、歌人の

近藤芳美氏(2006年6月21日死去)に師事していた。

従って、本書には章題毎に短歌が添えられている。






     第一章 芽生え

         初めての雪を見し子はポケットにつかみし雪を仕舞わんとせり

     第二章 双葉

         春野原たんぽぽ通り夕日坂おとうとが姉の手を引き歩む

     第三章 本葉

         教室に座れぬ吾子は中庭でタンポポの綿毛吹きふきおりぬ

     第四章 蕾

         ぺん先に冬至の薄ら日とどめいて世紀末的悲しみ綴る

     第五章 原野に咲く

         障害児の母なるゆえに吾が受けし艱難を竹のひと節とする

1985年の夏、娘ひな子は生まれた。

ひなちゃんが生後11カ月を迎えた時に「点頭(てんとう)てんかん」と

診断される。それからの25年の歳月をこの書は綴っている。




入院した小児病棟では、娘よりももっと過酷な運命を生きざるを得ない

子ども達が、この世に存在することを知る。




「ひな子のことをこの家の宝と思いなさい」と言ってくれた両親。





障害のある子を公立小学校の普通学級に通わせる上での教師や父兄との

軋轢。障害児を普通学級へ入れるのかという疑問に、論理で答えることの

難しさ。それに対する反論があり、反論の方が正当性を持っているように

思えるから。

しかし、その反面、子ども達のやさしい心や、クラスの一部のお母さんがたの

親身な情報や温かい言葉かけのあるありがたさ。

著者である母親も一緒に闘い、成長し、泣いたり、笑ったりの日々が

こと細かく、丁寧に綴られている。(読みながら、何度も泣いてしまった。)

1988年8月、中学1年生のひな子に初潮が。





      ひなちゃん、大人になったんだよ。お母さんと同じ大人だよ。

      生理が始まったんだよ




      ひな子は、夏の間に身長が伸び、一五〇センチを超えて

      いました。心も身体も、夏の光に向かってぐんぐん伸びて

      ゆくひまわりの茎のようです。茎の先には、小さな蕾が

      ふくらみ始めていたのです。




                

巻末には、児童文学作家の日野多香子氏の「しなやかで強靭な母の愛」が

収められている。







                      2011年3月発行   1200円+税 

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