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2017年2月22日 (水)

『野良猫を尊敬した日』 穂村弘 講談社

穂村弘の自虐ネタ(笑)のエッセイ62篇。

いずれのエッセイもオチがあり、ときに作り過ぎ?っていうくらいに

みごとなお話になっている。(不器用な生き方そのものが、穂村弘のボディー

であり、スタイルなのだ。)





「男の幻滅ポイント」に、声を出して笑ってしまう。

       ・キーボードのエンターキーだけ強く叩く

        カチャカチャと他のキーで入力して、最後に「どうだ」とばかりに

        「エンターキー」を叩く。やりたくなる気持ちはわかる。だが、その

        瞬間、小さな「俺様」が顔を出しているのだ。


        ・意味もなく、折りたたみ式の携帯電話をパカパカ開閉している

        ・携帯電話のメールアドレスがやたら長い

        ・ペンを廻す

        ・おかあさんが買ってきたような服を着ている

面白ネタ満載なのだが、時としてくすんとなるほどのせつない語りも。

たとえば「自分に忠告」、その3 「それが最後の会話になるから、ちゃんと

目を見て話せ」



        五年前のこと。実家から帰ろうとしたとき、目が不自由で

        いつもは奥の部屋から出てこない母親がよろよろと現れた。

        ー略 「栄養のあるものを食べて。車に気をつけて帰るんだよ」

        等々、「うるさいなあ、もう」と私は思っていた。でも口では一応

        「ありがとう」と云った。--あのとき「うるさい」と云わなくて

        よかった。その数日後に母が亡くなったからだ。--略 しかし、

        母の目を(そのとき)見ていなかった、のだと思う。





                      
昨日(2月21日)の朝日新聞「折々のことば」(鷲田清一)に、下記の言葉が

引用されていた。

        最後にかわした言葉が心残りだった、ということにならないように

                  田部井淳子「それでもわたしは山に登る」から。



穂村さんの母親との会話にしてもそうだが、生きていると、この生きていると

いうことが、突然絶ち切れることがあるなどと、考えられない。

来年も、来月も、明日さえも会うことが出来なくなるかもわからないのだ。







本日、2月22日は「にゃんにゃん」の日、猫の日だそうだ。

スージー・ベッカーの『大事なことはみーんな猫に教わった』みたいに、

猫に教わることは、まだまだありそう。






穂村さんは、「野良猫を尊敬」してるし……


                         2017年1月24日  1400円+税

 

        



        

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