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2017年2月 7日 (火)

『はじめての短歌』 穂村弘 河出文庫

「いい短歌の正体、教えます。」の帯の惹句に目が止まった。

       「教えてもらおうじゃ~ないの」(わたし 笑)





短歌とビジネス文書の言葉は何が違うの?

って、考えるまでもなく、それは違うだろう、と思う。

でも、その違いを論理的に説いてくれたのが、この1冊だった。

そして、長いこと短歌に関わっていると必然的に〈添削〉の機会が与えられ

たりする。その添削の時、ついやってしまうこと、あるいは、やってはならない

ことを教えられたような。



     A  銀杏(ぎんなん)が傘にぽとぽと降つてきて夜道なり夜道なり

        どこまでも夜道                     小池 光

     B  銀杏(ぎんなん)が傘にぽとぽと降つてきて夜道なりけりどこ

        までも夜道                        改悪例






Aは、4句目が10音と大幅に字余りになっている。改悪例のように「夜道

なりけり」と、すれば定型におさまる。しかし、Aは定型の禁忌を破ることに

よって生じた無限に繰り返されるような感覚が呼び起こされる。この歌の

中で伝えたい感覚は、「夜道なり」が無限に続く状況だと思うの。





     A 草つぱらに宮殿のごときが出現しそれがなにかといへばトイレ

                                      小池 光

     B 草はらに城のごときが出現しそれがなにかとおもへばトイレ

                                      改悪例



原作は破調である。その破調を直すことは簡単。改悪例のようにすれば

定型におさまる。しかし、原作から伝わってくる圧力みたいなものが改悪

例からは伝わってこない。「草つぱらに」の俗な話し言葉は「草はらに」と

直され、「宮殿」は「城」となっている。

つまり、上句の字余りと下句の字足らず、通俗な言い方や日本にはあり

えない宮殿のごときという比喩、それらすべてを使って、リズムで強烈に

揶揄(やゆ)している。ーー略

2例のみの引用だが、その解説は本書の穂村弘のを縮めたもの。

巻末に山田航の解説が付されているが、その中で下記のように述べている。



      穂村は、効率第一、実務一辺倒でバリバリ働く人生を別に否定

      したりはしていない。むしろそういう人がいなきゃ社会は回らないと

      理解している。しかしそういう人生だけではどうしても見えてこない

      人生のあり方というものが、この世にはある。仕事をするにあたって

      は、自分とは違う生き方を送る人々の考え方を感知できる能力が

      必要だ。ーー略


      この本は「短歌なんて何の役にも立たない」と思っている人に向

      けての熱いプレゼンテ―ションなのだ。短歌の読み解き方がわか

      れば、他人の気持ちがわかるようになる。ーー略




                  2016年10月10日初版発行   520円+税   

 

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