« 『お月さん、とんでるね』 夏野いづみ著  銀の鈴社 | トップページ | 『はじめての短歌』 穂村弘 河出文庫 »

2017年2月 6日 (月)

『石本隆一評論集成』 現代短歌社

944ページの箱入りの大冊が届いた。



著者・石本隆一氏は、1930年12月10日~2010年3月31日。

歌誌「氷原」を創刊、主宰。1964年に角川書店に入社、1984年に退職。

歌集に『木馬騎士』(1964年)・『星気流』(1970年)・『水馬』(1991年)・

『つばさの香水瓶』(1993年)他がある。





         Ⅰ前田夕暮

         Ⅱ香川 進

         Ⅲ律の流域--:現代短歌寸感

         Ⅳ短歌時評集

                           『文芸春秋』(短歌)・

                           『短歌研究』(短歌時評)・

            「朝日新聞」(時評)・

                          「短歌新聞」(歌壇時評)

         Ⅴ近現代歌人偶景

         Ⅵ歌の山河

         Ⅶ碑文谷雑記

         Ⅷ短歌随感


上記のような章の構成になっているが、Ⅳの「短歌時評集」がすこぶる

面白い。面白いというのは語弊があるかも知れない。

歯に衣着せず、ズバリズバリと核心に迫る。その筆法が小気味良くもある。

現代ではこういう書き方をする人はめったに見かけない。(書けば、その刃が

自分自身に返ってくるのを怖れて?ということも考えられる……)



        短歌の世界のヤングパワー。

        ただ、年齢が若いというだけでいまほど結社や歌壇ジャーナ

        リズムが、その作品を優遇したことはないように思う。けれど

        底意に、その質よりも希少価値への珍重があったり、優待席

        すなわち体制をおびやかされないよう埒外(らちがい)におく

        ためだったりする。それかあらぬか最近、若い人たちだけの

        雑誌がめだって創刊されている。ーー略

                                  「若者たちの同人誌」 (昭44・4)







今から47年も前に書かれた文章とは思えないくらいに、色褪せていないし、

現代という時代にも通用するのではないかしら。

まぁ、昔と違って機器の発達などで、今は容易に冊子が作れるということも

あるだろう。

昔のことを言うようになったらおしまいだが(笑)、歌集だって冊子だって

現代ほど自由には出せなかったものだ。







       批評とは、つまるところ他を素材にして「私」を語ることになら

       ざるをえないのであれば、「私」に帰着し「私」につながることを

       瞞着すべきではあるまい。ありもしない公平無私をよそおうより、

       心底によこたわる「私利私欲」に目を据えてそこから思考を出発

       させたほうが自戒の意味からもはるかに実害が少なかろう。ーー

                     「『私利私欲』としての批評」 (昭51・9)



批評の問題はなかなか難しい。

難しいだけに、書く人の資質も時に問われたりする。






石本氏が亡くなられてすでに七回忌も過ぎている。

この書の「あとがき」は、石本晴代さんのお名前になっている。

故人のために、故人を偲び、ご家族が心を籠めて、このような大冊を

刊行したのだろう。

               平成29年1月15日発行  定価 13000円

 

 

 

« 『お月さん、とんでるね』 夏野いづみ著  銀の鈴社 | トップページ | 『はじめての短歌』 穂村弘 河出文庫 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2032066/69497473

この記事へのトラックバック一覧です: 『石本隆一評論集成』 現代短歌社:

« 『お月さん、とんでるね』 夏野いづみ著  銀の鈴社 | トップページ | 『はじめての短歌』 穂村弘 河出文庫 »