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2017年3月12日 (日)

『狂うひと』 梯久美子 新潮社

〈「死の棘」の妻・島尾ミホ〉の副題の付いた評伝。

この書は読売文学賞を受賞した。

そして、8日に発表された第67回芸術選奨の文部科学大臣賞をこの書に

よって、評論部門で受賞している。(ちなみに歌人の小島ゆかりさんは、

歌集『馬上』で同賞の文学部門で受賞。)

巻末には「死の棘」の第一章から第十二章までのあらすじを掲載。

そして、島尾ミホ・敏雄の年譜が添えられている。

666ページの大冊で、優に単行本3冊分ほどの厚さである。

取材開始から11年をかけて書かれた評伝は、奄美に20回近く訪れたと

「謝辞」に記す。




島尾敏雄の『死の棘』は、精神に異常をきたした妻を看取る病妻ものとしての

評価?が高いが、著者は敏雄・ミホのそれぞれの日記や手紙、草稿や

ノート、メモのたぐいまで調べ、追及・考察している。


その筆致に魅了され。先へ先へと読みたくなり、この書を読んでいる間は、

至福の時であった。(17文字の謎? 17文字とは俳句?)

それにしても、モノカキの業(ごう)を背負っていたのは、やはり敏雄の方か?

「震災も戦争も自分をすり抜けていった」という島尾にとって、突破口と

いうか、現状に楔を打つような何かを欲していたのだろうか?


ところで、

ミホさんが短歌を作っていたとは……

                      2016年10月30日発行 3000円+税



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2015年の7月はじめ、加計呂麻島を訪れた。

島尾敏雄の足跡を辿る旅でもあったが、文学碑、特攻艇震洋基地跡などを

見て、奄美の島尾敏雄旧居を訪ね、そこの庭に建っている敏雄直筆の碑を

確認。鹿児島県立奄美図書館へも立ち寄った。

その折の加計呂麻島での拙短歌。





     みんなみの小さな島へいざなへるフェリー「かけろま」七月六日

     「島尾さん、あなたの声は……」書かれたる小川国夫の碑文の言葉

     ミホさんもマヤさんもともに眠る墓碑 島尾敏雄の『孤島記』の島

     黄の色の右納(いうな)の花の散る木下 すでにその色変はり赤錆ぶ

     呑之浦(のみのうら)のちひさな湾のみづの色みづの音さへかなしき  

     ものを

     
                 『秋光記』(ながらみ書房 2016年6月) miyoko

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