« 映画「追憶」 | トップページ | 『アカシヤの大連』 清岡卓行 講談社文芸文庫 »

2017年5月23日 (火)

『泣く大人』 江國香織  角川文庫

洗練されたお洒落な文章のつまったエッセイ集。

江國香織の、優雅で、ほどほどに我儘で、そして、繊細さが伝わってくる。

生き方がぶれない?ところがいい。

        忙しいというのは悪いことではないけれど、忙しがるのは

       はずかしいことだ、と私たちは考えているので、必然的に

       やせがまんには一目おいているのだ。

        やせがまんも優雅の一部だと思う。

                            「優雅な退屈」より







忙しい忙しいとのべつ幕無しに愚痴るのは、恥ずかしいことなのだ。

(まぁ、言う方も多少の〈謙遜自慢〉も含まれていると思うのだが……)

著者、江國香織は2004年『号泣する準備はできていた』で、第130回直木賞を

受賞したが、小説を書く心得みたいなものを『舌の記憶』(筒井ともみ/

スイッチ・パブリッシング刊)の書評にことよせて以下のように記している。







       たとえば小説を書くときに、「せつなさ」をつくりだすのはむずか

       しい。「かなしみ」や「不幸」、「困難」や「苦痛」や「淋(さび)しさ」

       は、状況をつくることで存在させ得るが、「せつなさ」は、そうは

       いかない。そもそも説明のつかない感情なのだ。



短歌作りにも当て嵌まるような言葉だ。

状況の説明ではなくて、そもそも説明のつかない「せつなさ」みたいなものを

1首にしょうとして、七転八倒しているのではないか、わたしたちは?

「あとがき」の言葉もなかなか洒落ていて、ちょっと笑えて、ちょっとせつない。

       略ーー

       生活というものはつねに小波の立っているもので、しかも刻

      一刻姿を変えてしまう。それをみつめようとすることは、しばしば

      笑ってしまうことでした。

        なにをやっているんだか。

        おもては初夏です。庭の沙羅双樹には、小さな、白い花が

        咲いています。

                
                                                     平成16年8月25日  476円+税

 

 

 

« 映画「追憶」 | トップページ | 『アカシヤの大連』 清岡卓行 講談社文芸文庫 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2032066/70645328

この記事へのトラックバック一覧です: 『泣く大人』 江國香織  角川文庫:

« 映画「追憶」 | トップページ | 『アカシヤの大連』 清岡卓行 講談社文芸文庫 »