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2017年6月 8日 (木)

歌集『海の窓』 中塚 節子  現代短歌社

岡山市在住の「朔日」所属の第一歌集。

万葉集にも詠まれている古い港町の「牛窓」。

牛窓で生まれそ育った作者は「あとがき」に、牛窓は原点とも記している。

現在では牛窓は「日本のエーゲ海」とも呼ばれ、マリンスポーツが盛んで

あり、オリーブ園のある町でもある。

   

       生くるといふことの重みを思ひをり『忍びてゆかな』の津田治子読みて

   紺浦(こんのうら)、綾浦などと美しき字名(あざな)を持てり牛窓(うしま

   ど)のまち

   日に一度われが決めたるわれの樹の下に来てしばし木の声聴かむ

   年頭にまづ書いておくわたくしの延命治療はしないでほしい

   別れといふはかくもあつけないものなのか緑葉に降る雨を見てゐる

   漆黒の夜の岬を越えてこしミホの衣につく夜光虫あまた(加計呂麻島)

   ふる里に万葉の歌一首ありて潮騒の島響(とよ)みと詠まるる

   何もせずにゐるのは性(しやう)に合ひません小坊主さんのやうに草ひく

   わたくしでよければ聴かせてもらひませう聴くのみになるやもしれぬけど  

   凡なるは凡なるままでよしとする額紫陽花(がくあぢさゐ)の青の深みて








1首目の『忍びてゆかな』、6首目の「ミホの衣につく夜光虫」などから、作者が

読書好きなことが窺える。ことに1首目の「生くるといふことの重みを」津田

治子の〈生〉から感じとっているあたり、共感する。

3首目の歌には、樹木に寄せる慰謝のこころが感じられる。

心の平穏を保つひとつの方法として、作者は日に一度「木の声」を聴いている

のだろう。

2首目と7首目は、作者のふる里の牛窓である。その牛窓をイメージしてこの

歌集のタイトルは『海の窓』と名付けられたのであろう。7首目には詞書として

万葉集の一首が添えられている。

    牛窓の浪の潮騒島響(とよ)み寄さえし君に逢はずかもあらむ

                      作者未詳  (巻十一  二七三一)






8・9・10首目の歌はかるがると詠まれている。

8首目の「小坊主さんのやうに」の比喩のユニークさ。9首目の自然体。

10首目の上句の楽天的な吐露。

肩肘張らずにうたっているところがなんともいい。


外塚喬氏の序文があたたかい。

 

                     2017年5月5日発行  定価2500円








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午前中に歯科の定期健診。

治療の時ばかりでなく、こうして、定期健診をしないといけないのだが、

ついつい後廻しになってしまう。

定期健診をしたので、一つ大仕事(笑)をしたみたいに、気持ちがいい。


朝顔と風船蔓を種子から撒いて育てている。

植え替えをすませ、そろそろ支える棒や、網を張らなければなるまい。

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