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2017年7月24日 (月)

『現代短歌』 2017年8月号 特集「テロ等準備罪」を詠む

『現代短歌』の表紙の装丁が変わったのは、いつだったか。

その変化と同じように、誌面も変っていった、と思うのはわたしだけだろうか。

8月号の特集は、「『テロ等準備罪』を詠む」だった。

編集部の但し書きによれば以下のように記す。






       このタイミングで詠まれた作品を記録することは短歌雑誌の

       責務と考え、50余名の方々に作品をお寄せいただき、特集と

       します。いわゆる社会詠、時事詠でなくてもかまいません。

以上の趣旨のもとに57名の方々が作品を寄せている。

いずれの歌も「テロ等準備罪」のことを真摯に考え、真っ向から詠んでいた

ように思う。その57名が7首ずつで合計399首。一冊分の歌集に充当する。











       恵まれて暮らすわれさへそこそこの暗黒をもつ ときどき疼く

                               「青波のごとく」 高島 裕

       黒胡椒まみれでわからなくなって誰の肉でもいい香ばしさ

                                  「黒胡椒」 東 直子

       

       紙莢(かみさや)にシュガーは固く詰められつ 問われおり

       「短歌で何ができますか」  「インタビュー 京都新聞」吉川宏志



       ただひとりチキン南蛮食す昼あらゆる思想より逃げてきて

                     「Around the Fifteenth of June」廣野翔一



       公開の調査に誰もムニャムニャムニャ、言わなかったことにする

                                   「時下」松下紘一郎



                「私」の暮らしの細部を歌にしてプライバシーを言い募れるや

                               「頭上雲なし」千々和久幸

                      

                生きている限りの未来どの場所に子の手を引けば助けられるか

                                                                            「健康法」花山周子

       
               日々の暮らしに特に影響ないだらう「日々」が転変するその日まで

                               「足袋重りたり」黒瀬珂瀾

       
                最初から生きてゐなかつたことにして(何が?)レプリカなのだ

        おまへも                 「レプリカの羽」濱松哲朗

       
               
                あるべきをまもりてあるをよしとするこゑを聴きつつ茶碗を洗ふ

                                   「こゑ」阿木津英

       
                おまへは詠ふな、生きるかなしみをと吹く風にどこまでまもれる

       だらう〈わたし〉を            「葡萄ふたたび」松本典子

       

                梅の木に梅の実ふえる(ナニゴトノ不思議ナケレド)押し黙りつつ

                              「あとの世界に」佐藤弓生










とりあえず選んだ歌は12首。

選歌基準ってのは甚だ曖昧というか、筆者に訴えかけたものを選んだという

我儘なものである。従って選ぶ人によって歌は随分変わることだろう。

その点は、ご容赦の程を。

2首目の歌は「準備罪」を直截的にはうたっていないが、読めば読む程

怖くなる。おそらく暗喩の歌か。

3首目、作者は京都新聞になんと答えたのだろう。

4首目、「あらゆる思想より逃げてきて」のことばは切実だ。生き残るためには

     逃げることだって、あり得る。

7首目、親は子を守る義務がある。下の句にはいのちを護る本能が。

8首目、「特に影響ないだらう」が大方の見方。しかし、いつなんどき転変

     するやも。

10首目、結句の「茶碗を洗ふ」にリァリティが。日常の中から詠まれている

     ところがいい。

11首目は、中野重治の「赤ままの花を歌うな」を想起するし、タイトルも

       斎藤茂吉の「百房の黒き葡萄」の歌が詞書につかわれている。

       意欲的な7首。

12首目は、北原白秋の「薔薇ノ木二/薔薇ノ花サク。」が思い浮かぶ。

       一連、詩情を濁すことなく纏められている。



便宜上、詞書や日付は割愛した。ごめんなさい。







それにしてもこの号の「編集後記」は創作?ですよね。

純朴な?わたしは信じてしまう(笑)ところだった。



「よからぬ歌会を開きさうな歌人のリスト」 ???
       

 

 

 

 

                       


   

       

       

 

 

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