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2017年7月13日 (木)

歌集『窓は閉めたままで』 紺野裕子 短歌研究社

著者は、福島市で生まれ育ち、高校卒業後は現在に至るまで首都圏で暮らし

ている。

      ーー略

      二〇一二年春から二〇一七年春までの歌を収めた。帰還困難

      区域の大熊町を通過する間は、窓は閉めたままでなければ

      いけない。警察官が三人一組で監視に立つ。この現実を記憶する

      ため『窓は閉めたままで』を歌集題としたーー略

                              「あとがき」より抜粋







東日本大震災における福島第一原子力発電所の事故。

ふるさとの在りように心を痛めつつ、うたった作品は著者の視線で捉えられ、

臨場感があり胸を打つ。


      ふるさとの住宅除染説明会 父に代はりて出席をする

      行政も業者も知らぬ除染日程どこへ電話をすればいいのか

      老いし夫婦のかたちつぶさに子らに見せ父母は逝きたり二年を

      おかず

      螢(ほうたる)よこつちの水は苦いぞい 汚染土を抱くちちははの庭

      はつなつはりんごの花の咲きさかるところ紺野の姓は寄りあふ

      ふくしまの止むことの無き喪失をわが身のうちにふかく下ろさむ

      トン袋五段に積まれ汚染土は海までつづく野ざらしのまま

      家畜にはあらずペットにもあらず生きのびた牛草食むをみる

      一時帰宅の町民のため水とトイレ用意して待つプレハブがある

      誰がための帰還ならむか〈絆〉などゆめ持ちだすな為政者たちよ


ドキュメンタリーを読むような衝迫力がある。

10首を引用したが、福島以外の歌も勿論収められている。しかし、これらの

歌を読むと、著者にとって、いま、うたう、うたわなければならないものは何

なのか、ということを考えさせられる。







5首目を読むとせつない。そう、田舎では同じ姓の家が多い。

はつなつになると、林檎の花が咲き、同じ姓の家があちらにもこちらにも

点在するふるさと。そんなふるさとなのだが、一変してしまったのだ。



ところで、

歌集後半に収められている章「シベリア」に惹かれた。わたしが旅をしたい

地の一つでもある。

著者は「短歌人」に所属。第三歌集である。


                     帯文 小池 光

                     平成29年6月27日     2500円+税



               



     

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