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2017年7月 2日 (日)

『新選 小池 光歌集』 現代短歌文庫

第5歌集の『静物』と、第8歌集の『山鳩集』を全篇収めている。

砂子屋書房の短歌文庫では、『小池 光歌集』・『続小池 光歌集』に

続く3冊目ではないだろうか。

『静物』は、40代の終わりから50代の歌集で、『山鳩集』は、2004年から

2009年までの6年間、即ち著者の57歳から62歳くらいまでの作品になる?。


ところで、こうして文庫に収める時に、単行本で出した時の作品の

訂正をしたり改作するのか興味がある。それで、とりあえず『静物』だけを

単行歌集と今回の文庫版とをつき合わせてみた。

以下、気がついた歌のみ。






 (原作)おたくやるじゃない、とか言つて十数手後の、と金が「詰めろ」

 (文庫) おたくやるじやない、とか言つて十数手後のと(、)金が「詰めろ」



 (原作)盲人のまへに芙蓉のくれなゐが沈黙をしてをれるときの間

 (文庫)盲人のまへに芙蓉のくれなゐが沈黙をしてゐたるときの間




  (原作)重力のしづくの如く実りたるアボガドは来(き)ぬ死の谷(デス・

      ヴアレー)より

 (文庫)重力のしづくの如く実りたるアボカドは来(き)ぬ死の谷(デス・

      ヴアレー)より









1首目は、拗音の小文字を訂正し、「と金」の部分の「と」にルビの点を

付けている。たぶん、意味を通じ易くしたのだろう。

2首目は明らかな改作のように思う。「をれる」を「ゐたる」と改作。

3首目は、間違い?「アボガド」を正しく「アボカド」に訂正している。

この文庫には巻末に歌論とエッセイが収められている。

これが滅法面白い。小池さんのエッセイは夙に好評であるが、

今回収めている塚本邦雄の文体に対する考察、そして、

「茂吉という人間」の文章など、若手の歌詠みたちに是非読んで

貰いたい。

      

             短歌は私性の詩型とか一人称の詩型とかいわれる。ことの

      是非はいま置くとして、仮にそうであるならば、どういう人物像が

      その作品から立ち上がってくるかが短歌の価値を左右する

      理(ことわり)になる。おもしろい人間が立ってくればその短歌は

      おもしろい。興味の湧かない人物しか浮かばないのであれば

      いかに作品が「立派」であろうと、その短歌はつまらない。ーー略

『短歌』の2003年5月号に掲載されたものの転載である。

これを読むと、茂吉の歌を読み返したくなってくる。

     


     その鞄われに持たれてとしふりぬ遠くの虹を見たりなどして

                             『静物』より  小池 光

                       2017年6月28日 初版発行  2000円+税

 

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