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2017年8月 9日 (水)

『続々 花山多佳子歌集』 現代短歌文庫 砂子屋書房

『春疾風』(全篇)、『木香薔薇』(全篇)が収められている。

『木香薔薇』は、作者54歳から57歳の時期の作品だが、このたび読み

返しても、面白さは変わらない。

というか、当初読んだ時、印象深かった作品がそのまま記憶にあり、

同じ歌に付箋をしたのではないだろうか。


      わたしは何を送つたのだらう書いた手紙が机のうへに

      大根を探しにゆけば大根は夜の電柱に立てかけてあり

      疲れてるのがすぐわかるよと言ふけれどお前のせゐで

      不機嫌なだけ

      きもちわるい老人にきつとなるのだらう 他人のことは思ふことあり

      「いぬのきもち」といふ月刊誌よむ人のきもち思へばきもちわるくて

1首目、多忙を極めるゆえのミスであろうか。小島ゆかりさんの歌に、

「今日ひどくこころ疲れてゐるわれは買物メモをポストに入れぬ」(『馬上』 

現代短歌社刊 平成28年8月)があったが、くすっと笑いたくなる可笑しさで

ある。

2首目は、ことに印象深く、たびたび皆さんに引用された歌である。

4首目〜5首目、「きもちわるい」、「きもちわるくて」の歌。花山さんらしい ?

感受である。








巻末の「歌論・エッセイ」では、八角堂だよりの「新かな・旧かな」(1)〜(7)を

熟読。その(5)で、詩歌文学館での「詩歌のかな遣いーー『旧かな』の魅力」の

シンポジウムに触れて書かれていた。その中で松浦寿輝氏(詩人)が、

吉原幸子の詩「無題(ナンセンス)の「ゐる」という表記が「とても可愛いくて

魅力的」と発言したらしい。

その吉原幸子の詩なのだが、「ゐる」は旧仮名遣いをしているが、

促音は旧仮名遣いをしていない。(『吉原幸子詩集』 現代詩文庫 思潮社)

 

               風 吹いてゐる

        木  立ってゐる

       ああ こんなよる 立ってゐるのね 木

       風 吹いてゐる 木 立ってゐる 音がする

       よふけの ひとりの 浴室の

       せっけんの泡 かにみたいに吐きだす にがいあそび

       ぬるいお湯

       --略           無題(ナンセンス)の詩より







吉原幸子は「ゐる」・「ゐなくなる」・「ゐない」と「ゐ」のみの旧仮名遣いと

いうことが窺える。「立って」・「せっけん」などの促音は旧仮名遣いには

なっていない。

ちなみに、吉原幸子の他の詩の表記も調べてみた。

「さうして」・「うたふ」・「とほい」・「なめくぢ」・「やうに」などは旧仮名遣いに

なっているが、促音はいずれの詩でも新仮名表記のようである。

そんなことを思いながら、『続々 花山多佳子歌集』を読了した。







                   2017年7月28日 発行   1800円+税

 

 

 

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