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2017年9月27日 (水)

『岡井隆考』 江田浩司  北冬舎

564ページの大冊の評論集が出た。

通常の評論集の2冊分はゆうにある。

まだまだ読んでる途中の段階なのだが、この書の書かれている当の

岡井隆氏が「未来」の〈選者感想〉や〈後記〉で記すように、ともかく好著だと

思う。

好著ゆえに生半可な読みで読者を惑わせることはしたくない。

しかし、深く深く読むには時間が足りない。





第一章のⅤ『〈テロリズム〉以後の感想/草の雨』の連作「弟よ」を中心に

を読みながら、岡井隆と弟の関係、そして弟の長男夫婦(1984年大韓航空機

撃墜事件によって死亡)のことなど、今から30年も前のことなどを思い出したり

した。

    二つ違いの弟が、精神的にもたしかに弟であったのは、幼少年期

    までのことで、アドレッセンス以後は、どちらが兄貴かわからなくなって

    しまった。 --略       

                  初期歌集『O(オー)』の「跋にかえて」から引用。



著者、江田浩司の丁寧な引用。そして、その引用の歌や文章を繋ぎながら

深く深く錨を下ろしていく。岡井にとっての弟の存在、岡井の創作にどのよう

な影響を与えたのか、など。




ところで、話は飛ぶが(ここからは、私のメモ)岡井の弟の妻、岡井仁子さんは

陶芸作家。長男夫婦の追悼のための陶器作りに当時、精を出していた。

1990年1月の「岡井仁子陶技展」(大丸6階・アートギャラリーにて開催)では、

岡井隆が短歌を寄せている。(この時の「海ざくろ」の壺と短歌のカラー写真を

机の前に今でも貼っているのだ。)




          「海ざくろ」に寄せて         岡井 隆(歌人)

    大いなる暗きみどりの實(み)を抱きてことばはあらずつひに言葉は

    流れよるあをきざくろは波のまに幾日ありけむ紅(あけ)を胞(はら)みて

    海底に大きざくろの木がありてかなしみの實(み)を放つ夕ぐれ


この『岡井隆考』の巻末の「岡井隆自筆年譜抄」、「岡井隆著作一覧」、

「岡井隆研究史」、「文献索引」、「人名索引」、「初出一覧」と細やかな配慮

がなされており、この一書は岡井隆研究には必読の一冊になっている。

(それにしても、著者の岡井隆に寄せる執心の賜物であろう。加えて、

北冬舎さんの奮闘ぶりに喝采を送りたい。)


ちなみに、自筆年譜から岡井隆の結婚年数を計算すると(笑)

来年は「磁器婚式(陶器婚式)」。

90歳と58歳のご夫妻である。

 

 

                      2017年8月20日初版発行 3500円+税





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