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2017年11月10日 (金)

『下谷風煙録』 福島泰樹  皓星社

福島泰樹の第30歌集が出た。

本歌集は2016年冬から2017年夏までの作品から選び、310余首を収めて

いる。

第一歌集の『バリケード・一九六六年二月』が刊行されたのは、1969年の

秋だった。以来48年、泰樹の激走はとどまることはない。

     

           御徒町大原病院ぼくを生んだ同じベッドで母ゆきたまう

     昭和十九年三月 ぼくは祖母に抱かれ遺骸の母を見ていたのだろう

     幼年の目が俯瞰する風景は地平線まで廃墟であった

     歳月の彼方にいまも燃えている曼殊沙華よりあかく切なく

     こみどりの冬のコートよ渋谷駅ホームに佇ちているヒヤシンス

     生きているうちにおのれの墓を建つ『寺山修司全歌集』はも

     祈るように君は手帳を胸にあて書いていたっけ歳月は風

     高橋和巳寺山修司春日井建、清水昶も五月に逝けり

     カーテンは睫毛のように擦(こす)られて涙を流しているのであった

     この俺の在所を問わば御徒町のガードに点る赤い灯である


8月30日、福岡市であった「短歌絶叫」コンサート。

K塾福岡校の文化講演会でのコンサート。

あいにくこの日私は、福岡に、日本に、いなかった。よってこのコンサートの

ことは新聞紙上で写真と共に後日拝見した。(「ダンス」が聴きたかったよ。)






死者に対する記憶を大事にし、その〈生と死〉を歌い上げる福島泰樹の

姿勢は変わることがない。

このたびの第30歌集も過ぎた歳月をいとおしみ、その記憶を克明に紡ぎ

出している。



①首目②首目の実母の死、18年3月に生まれた泰樹が満1歳になるか

  ならないくらいで覚えている筈はないと思うのだが、これは、想像の

  賜物「見ていただろう」なのだ。実母が死んだ悲しみをかなしみとして

  受け止めることさえできないみどり子の〈悲しみ〉を思い遣っている。


③首目は、昭和20年3月の東京大空襲であろうか。その風景は「地平線

  まで廃墟であった」のだ。


⑤首目の歌には詞書が付いている。「その日からきみみあたらぬ仏文の

   二月の花といえヒヤシンス」


⑦首目の詞書は「立松和平逝きて七年」とある。

  ふたりの交情の篤さは、たびたびその文章のなかで知った。


⑨首目には「北村太郎へ」と詞書が付いている。

 『荒地の恋』の北村太郎も逝ってしまった。享年69歳だった。



文章といえば『短歌往来』(ながらみ書房)で連載している「時言・茫漠山

日誌より」が面白い。面白いというよりそのただならぬ多忙ぶりに息を

ひそめつつ見守っている(笑)。11月号では187回となっているのでこの

連載は15年以上続いている計算になる。


短歌絶叫コンサートは1500回以上のステージを披露している。

そして、今もなお毎月10日には吉祥寺曼荼羅でのステージも開いて

いるのだろう。



「どんどん悪い時代になってきている。だからこそ死者の言葉に耳を傾け

ないといけない」と、新聞のインタビューに語られていたのが印象深い。

        
        

        ーー略

        死者は死んではいない。死者たちが紡いできた記憶と夢の

        再生 ! 歌がそれを可能にするのだ。

                      『下谷風煙録』 跋  福島泰樹

 


                  2017年10月30日 初版発行  2700円+税



cat      cat

10時、N さんより珍しく電話あり。

とりたてて用もないのに、暢気な話を際限もなく(笑)する。

息子が結婚していない。(する気がない。)

従って孫もいない。(原因がないのだから、結果は望めない。)

というお互いの共通項に安心(?) したり、慰め合ったり、傷を舐め合ったり(笑)



考えると、なんと、非生産的な話を延々としていたのだろう。

 

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