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2017年12月 6日 (水)

『ピアフは歌ふ』 伊勢方信歌集 本阿弥書店

平成25年9月から29年4月までの4年間の作品を収めた第8歌集。

終戦の翌年にエディット・ピアフの歌ったシャンソン「バラ色の人生」、

この歌は「勝者・敗者の別なく、自分らしい生き方を探る起点として、

希望を与えてくれたことは否めない。」と、「あとがき」に記している。




     涅槃像をろがみくだる箭山(ややま)より周防の灘へ茜ひろごる

     いもうとの積む石くづす鬼卒らはわが国東(くにさき)の鬼にあらざり

     一夜にて鬼の築(つ)きたる石段をのぼりゆくとき日は闌けゐつつ

     わたつみに日の道月の道ありて今宵仲秋の月渡りゐつ

     三隅川くだれば筑後 大宰府へつづく街道に無花果ひらく

     帰省の子見送る庭に喬木となりたる楤の芽がふくらみぬ

     傷つかぬ生き方はなし あかときのたとへば葉蘭に跳ぬる霰も

     わが遺す歌はおほよそ歎きにてなげきの塚を盛るここちせり

     神仏と共に生きこし国東の日は海に出で海に沈みぬ

     ちちははの知らぬ時代を生きつぎてけさ七十五歳(ななじふご)の

     熱き茶をのむ








大分県別府市在住の著者だが、生まれは国東である。

大分は、わが故郷でもあるので、この一冊はふるさと満載でうれしい。

1首目の「箭山(ややま)」は、八面山(はちめんざん)とも呼ばれ、どの方角

から見ても同じ姿だと子どもの頃、きかされたものである。



3首目の「一夜にて鬼の築(つ)きたる石段」は「熊野摩崖仏」であり、ここの

石段は大きな荒い石が無造作に積みあげられている。そんな石段ゆえに

鬼が一夜で築いたのだという伝説があるのだろう。登るのに難儀をする

石段でもある。(思えば、随分昔にNHK学園の旅でO井さんやS藤さんなど

と登ったような記憶が……)







さて、さて、そんな話題は別にして、75歳になった著者の第8歌集には、

身辺の雑詠から、社会への醒めた眼差し、成人した子等に対する思い、

早くに亡くなられた妹さんへの追慕などが歌われている。

「希望が果敢無い幻想」だったとしても、生きて、生きて、歌うしかないのだ。

   


         バラ色の人生はたれも知らぬゆゑ声おさへ歌ふエディット・ピアフは










                    2017年11月19日    2700円+税

 

 

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