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2017年12月 4日 (月)

歌集『夜のボート』 鶴田 伊津  六花書林

前歌集『百年の眠り』に続く10年ぶりの第2歌集。

真っ黒の表紙のシンプルな装幀に著者の思いの丈が込められて

いるような気がしないでもない。

 

     この世とは忘れてもよいことばかり蜆をひとつひとつ食みおり

     アンパンマン戦うたびに「こわいからテレビ変えて」と吾子は泣きたり

     もつれたる根をほどけずにいるごとく満身創痍 ええわどうでも

     思いきり叱れば部屋の隅にゆきぬいぐるみの耳かじりいる吾子

     落葉ののちの軽さをてのひらに握りしめれば秋、匂い立つ

     子のなかにちいさな鈴が鳴りているわたしが叱るたびに鳴りたり

     もっともっと産みたかったよこの秋のコスモスが地に揺れいるくらい

     ガムランの響くわたしの体内をあなたは知らぬ 知らぬままいよ

     お前とかあんたとかいうあけすけな関係がいやや、いややったんや

     ぼうりょくをしらないわたしの両の手がふるえる ふるえをおさえ

     ふるえる









猥雑な世間から隔離されたような、母子の日常がうたわれている。

母(作者)の心は真っすぐ、吾子に向けられている。

従って吾子以外の他者(夫であれ)入り込む余地がないように、その日常は

子を軸にして巡っているような感じである ?  。



その吾子(娘)も10年前は2歳であったのだが、12歳になった。

母子一体の関係はこれから母の方が子離れしないといけないのでは

ないかと作者自身も薄々気付いている。


母と子の濃密な季節が過ぎようとしている。

しかし、このような〈濃密な母と子〉の時間を持てた、そのことただけでも

幸せだったと、いえる。

「意地っ張り強情頑固内弁慶」な子は、母(作者)の子である。


2度、3度とページを捲るたびに、作者の心情が纏わりつくような感じが

した。粘着質な ?  作風というか、うまく言えないのだが、かなり気になる

作者である。


                 2017年12月15日   2400円+税

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