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2018年6月16日 (土)

『水中翼船炎上中』 穂村 弘    講談社

スリーブに印刷されている「17年ぶりの新歌集」が、この歌集の

キャッチフレーズかな ?

そのスリーブ箱の中から歌集を抜きとると、出てきたのは瀟洒な装幀の

かっちりした歌集。(穂村さんの気合の入れ方がびんびん伝わってくる。)







この装幀が9パターンあるというのも異例では。

ちなみに手許の歌集は、表 Bパターンで、裏は aパターン。

装幀の在り様が話題になるのも目論見(笑)通り。

ともあれ、贅を尽くして ? いる。

 

    コンビーフはなんのどういう肉なのか知ろうとすれば濡れた熱風

    電車のなかでもセックスをせよ戦争へゆくのはきっと君たちだから

    夕闇の部屋に電気を点すとき痛みのようなさみしさがある

    約束はしたけどたぶん守れない ジャングルジムに降るはるのゆき

    生きたいように生きなさい ほほえみに隠れてしまうちちははの顔

    母のいない桜の季節父のために買う簡単な携帯電話

    今日からは上げつぱなしでかまわない便座が降りている夜のなか

    ゆめのなかの母は若くてわたくしは炬燵のなかの火星探検

    瓶詰のアスパラガスのなんだろうこの世のものではないような味

    真夜中のスマートフォンに囁いている基地からの距離を知るため



11章にわかれているが、冒頭の1章と巻末の11章は「現在」の歌を収録。

2・3・4章は「子供時代」を回想してうたっている。

この回想の章が好きな人もいるだろうが、個人的なわたしの好みとしては、

1首も上記に取り上げていない。



2首目の歌の過激さ。それでいて、現代社会を考えさせられる。

5・6・7・8首目の歌、穂村弘の〈人生〉を感じさせられる。

母親を亡くしたのちの息子の情動が具体を通してうたわれている。

ことに、6首目の「父のために買う簡単な電話」など、泣きたくなってしまう。

連絡手段としての携帯電話を父親に持たせる息子である作者。


穂村さんも50代半ば、人生の悲喜を、艱難を、その身に添わせている。

斬新な歌はそんなに多くなく、むしろ、しみじみと味わえる一集となっている。


                        『水中翼船炎上中』メモ 穂村 弘

                        2018年5月21日 第一刷発行

                        2300円 税別


    

自主活動となった「陽だまり短歌会」で、『水中翼船炎上中』を資料として

取り上げることになった。

皆さんはどのような反応をしてくださるか、タノシミ。

そういえば、先日その会のNさんから頂いた、あじさいの花が玄関にも

リビングにも、飾っていて、豊かな気持ちになる。

今朝はそのあじさいの水切りをしなおした。

まだまだ元気。





         

19:45 月と金星がランデブーしている。

 

 

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