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2018年7月28日 (土)

『祝祭』 中村重義句集  文學の森

昭和6年生まれ、現在「寒雷」「天籟通信」同人の第三句集。

句歴70余年、60000句ほどの中から選び抜かれた句を収載。


          花時計いま爆心地指す時刻

          俳号も擬態のひとつ黒揚羽

          爆心地の向日葵無口で押し通す

          帝王切開めきて西瓜に刃を当てる

          ガン宣告、供花は野牡丹だけでよい

          法名を決めて炎暑をたぢろがず

          子規といふ仕掛け花火のやうな人

          父の日は黙つて父になつてゐる

          あの世よりこの世が大事稲の花

          初御空句を詠むことは生きること



2句目の「俳号」だけど、中村重義は俳号ではなく、本名のようでもある。

しかし、俳号を持つ人は、俳句の上では「擬態」を装っているのかしら。

実人生の作者と、作品上の作者とかけ離れている人も、いるには居る

ような気もする。(短歌の世界でも…)


1句目、3句目の「爆心地」。原子爆弾を投下された8月6日、8月9日、

広島、長崎がただちに思い浮かぶ。


4句目は不思議な句。帝王切開をしたことのある医師ならばともかく、

西瓜に刃を当てる時にそのような連想がゆくところが、ユニーク。


5句目、6句目。詞書によると、大腸癌手術をしている。他の句の詞書にも

胆のう切除手術をしている。6句目の「法名を決めて」もむべなるかなと。

この炎暑さえ「たぢろがず」のおひとなのだ。



9句目、10句目。「この世が大事」と思うのも、命があればのこと。

命さえあれば、終生、句を詠むことが出来るのだ。


俳句って、人生を詠むことが出来るんだと改めて思った次第。


                         平成30年6月3日

                          3000円+税

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